デジタルトランスフォーメーションがもたらす価値

デジタルトランスフォーメーション

別記事「データは未来の通貨となり得るのか?」で、近年データの価値が高まっていることを紹介しました。

それでは、データにはどの程度の経済的価値があるとされているのでしょうか?

 

今回の記事では、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」というキーワードに着目し、ミクロな観点で

  • デジタルトランスフォーメーションがもたらす経済的効果
  • デジタルトランスフォーメーションのメリット
  • デジタルトランスフォーメーションで注目される分野

 

の3つを紹介していきます。

 

デジタルトランスフォーメーションがもたらす価値

はじめにデジタルトランスフォーメーション(DX)とは

デジタルトランスフォーメーションはしばしば「DX」とも表記されますが、その用語の起源は、著者がまだ大学生時代だった2004年にスウェーデンにある公立大学のウオメ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱されたと言われており、次の通り定義されています。

The digital transformation can be understood as the changes that the digital technology causes or influences in all aspects of human life.

日本語訳の例として、Wikipediaでは「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」と紹介されています。

少し抽象度の高い定義ですが、その意味をイメージすることは出来ます。

 

次に、経済産業省が2018年に発表した「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」によると、DXは次のように定義されています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

DXの力でプロダクトやサービスを向上させるだけではなく、業務や企業文化までをも変革させる、と言及しており、エリック教授の定義より企業や組織レベルでイメージできるような定義となっております。

 

もう少し、具体的な内容も見ていきます。同じく、経済産業省が推し進めているデジタルトランスフォーメーションの内容として、次のような文言が掲げられておりました。

これまでの、文書や手続きの単なる電子化から脱却。
IT・デジタルの徹底活用で、手続きを圧倒的に簡単・便利にし、
国民と行政、双方の生産性を抜本的に向上します。
また、データを活用し、よりニーズに最適化した政策を実現。
仕事のやり方も、政策のあり方も、変革していきます。

行政手続きのデジタル化を通じての簡易化などで生産性の向上をさせる、とあります。

省庁こそ異なりますが、総務省が現在推し進めているマイナンバーカードもDXの一環と考えることができそうです。

 

デジタルトランスフォーメーションがもたらす効果は?

国や企業が推し進めようとしているデジタルトランスフォーメーション(DX)ですが、デジタルトランスフォーメーションがもたらす経済的効果はどの程度の規模なのでしょうか?

また、デジタルトランスフォーメーションで得られる具体的なメリットは何なのでしょうか?

そして、デジタルトランスフォーメーションではどのような分野が注目されているのでしょうか?

 

ここからは、この3点について書いていきます。

①デジタルトランスフォーメーションがもたらす経済的効果

2018年にマイクロソフト社がIT専門の調査会社IDC社に委託し調査&報告された内容(*1)によると、デジタルトランスフォーメーション(DX)により「アジア太平洋地域のGDPは2021年までに1兆米ドル(日本円換算で110兆円)以上増加する」と発表されています。

 

また同報告の中には次のような内容も含まれております。

  • アジア太平洋地域のGDPの約60%がデジタル製品まはたサービスから発生する
  • 2021年まで、DXは0.8%の年平均成長率を実現する
  • DXは、利益率の向上、生産性、顧客の支持、新製品やサービスからの収入、およびコスト削減をもたらす。このメリットは3年間で約50%向上する
  • DXリーダーは、DXフォロワーと比較して2倍のメリットを享受する
  • アジア太平洋地域のDXは、最終的にはスマートで安全な都市に住む市民に、より価値の高い仕事の機会と個人所得の増加という利益をもたらす

 

それぞれの数字の根拠や分析の前提などの詳細までは記載されていないので、どの程度信じてよいものなのかは分かりませんが、DXは想像をはるか超える経済的効果を生み出すと言われていることが分かりました。

(*1) ”Digital transformation to contribute more than US$1 trillion to ASIA Pacific GDP by 2021″

 

②デジタルトランスフォーメーションの5つのメリット

同報告で、アジア太平洋地域の中規模および大規模組織のビジネス意思決定者に対して行われたヒアリング結果によると、デジタルトランスフォーメーションで得られるメリットは次の5つとされております。

  • 収益率の改善
  • 生産性の改善
  • 顧客ロイヤリティの改善
  • コスト削減の改善
  • 新製品・サービスからの収入

 

DXにより「アジア太平洋地域のGDPは2021年までに1兆米ドル以上増加する」とありましたが、実際のヒアリング調査で挙がったメリットは、収益率・生産性・コスト削減の改善などであり、すべてがGDP増加に結び付くメリットであると言えそうです。

 

③デジタルトランスフォーメーションで注目される4つの分野

また同報告の中で、デジタルトランフォーメーションは、次の4つの分野で大きく成長すると予想されています。

  • モビリティ
  • クラウド
  • モノのインターネット(IoT)
  • 人口知能(AI)

いずれの分野(用語)も、現代において知らないビジネスパーソンはいないと思います。しかし、2000年代の時代ではどうだったでしょうか?

少なくとも私にとっては馴染のない言葉だったように思います。当時はユビキタスなどという言葉の方が流行っていたことを覚えています。つまり、これら分野はここ数年で急速に注目が高まっている分野であるということは間違いないように思います。

 

また、これら4つの分野の位置づけを考えると、4分野のうち3分野は何かの目的を実現するための手段であり、その手段・技術はデータと密接に関わりがあることが分かります。

  • モノのインターネット(IoT):データを集めるための手段・技術
  • クラウド:データを保管・共有するための手段・技術
  • 人口知能(AI):データを活用するための手段・技術

 

これらのことから、デジタルトランスフォーメーションの時代では、データを単に電子化(デジタル化)するだけではなく、データをどのような手段で集め・どうやって管理し・どうやって活用していくか、等のスキルが重要になってくるのかもしれません。

 

まとめ

今回の記事では、

  • デジタルトランスフォーメーションがもたらす経済的効果
  • デジタルトランスフォーメーションのメリット
  • デジタルトランスフォーメーションで注目される分野

の3つについて、マイクロソフト社の報告を参照し紹介していきました。

DXにより「アジア太平洋地域のGDPは、2021年までに1兆米ドル以上増加する」と予測され、DXにより「収益率・生産性・コスト削減などの改善する」ことが期待され、「モビリティ・クラウド・IoT・AI」などの分野が注目されていることが分かりました。

またDXで注目されている分野から、「データを収集するスキル」「データを管理するスキル」「データを活用するスキル」などのスキルが今後より重要になってくるのかもしれません。

 

じゃあ。

 

関連記事

データは未来の通貨となり得るのか?

[article-banner-2]

ABOUTこの記事をかいた人

パラレルキャリア研究会創設メンバー 岩手県出身。東北大学工学部卒、同大学院工学研究科修了。半導体メーカーに入社後、エンジニアとして半導体製品の企画・開発に従事。30代後半に軸ずらし転職でキャリアをシフト。本業の傍ら独学でPython&統計学を学習中。1児のパパ。趣味は日本酒、ロードバイク。中小企業診断士、SAKE DIPLOMA。