統計学的に「令和婚」はあったのか?

婚姻届

 

2019年5月1日より、日本の年号は「平成」から「令和」に変わりました。ちまたでは「令和婚」や「令和ベイビー」なんて単語も耳にすることがありましたが、実際はどうだったのでしょうか?

 

今回の記事では

  • 「令和婚」が本当にあったのかをデータで知りたい
  • 「令和婚」の有無を統計学で求めた結論に興味がある

 

という人に向けて、「統計学的に令和婚はあったのか?」というテーマを、実際のデータと、統計学的な分析手法であるt検定を用いて、結論を求めていきます。

 

統計学的に「令和婚」はあったのか?

2019年5月1日に、日本の年号は「平成」から「令和」に変わりました。

著者自身、日常生活の中で、令和という言葉を使う機会はほとんどありませんが、平成から令和に変更となった当時は、それなりに高揚感のようなものがあったように覚えています。

特に、第一子が令和元年に誕生したこともあり、「この子は、令和ベイビーなんだなー」と、なぜか嬉しい気持ちになりました。

このように、平成から令和への切り替わったことは、日本で暮らす人々に、なんらかの心理的作用が働いたのではないか、と考えています。

 

そこで今回は、この「令和」が作り出した心理効果を、統計データと統計学を用いて検証していきます。

先の例では「令和ベイビー」と書きましたが、赤ちゃんは「授かる」という表現もある通り、偶発的な要因もあるため、今回は「令和ベイビー」に替わり「令和婚」をテーマとし、「統計学的に令和婚はあったのか?」を検証していきます。

 

令和婚はあったのか?

① 婚姻数データはe-statより入手

婚姻数のデータはe-statより入手可能です。

データは「人口動能統計(婚姻)」を用います。

e-stat上のデータは、CSV形式でダウンロードすることができるため、前処理の手間も少なく、すぐに分析作業を始めやすいのが嬉しい点と言えます。

 

② 1947年以降の婚姻数の推移は?

次の図はe-statより入手した婚姻数の年別の推移を折れ線グラフで表わしたものです。

婚姻数

グラフとデータより読み取れるデータの概要は次の通りです。

  • 1947年から2019年までのデータがある
  • 1950年から2000年までは5年刻みにデータがある
  • 2000年以降は毎年のデータがある
  • 婚姻数のピークは1970年の10.3万人
  • 2000年以降の婚姻数は右肩下がり傾向
  • 2018年(平成30年)の婚姻数は5.9万人
  • 2019年(平成31年・令和元年)の婚姻数は6.0万人

 

ということで、2019年(平成31年・令和元年)の婚姻数は、右肩下がり傾向のある近年において、前年より約1万人増えていることが分かります。

この1万人の増加が偶然かどうかを、統計学的に結論を出すことは可能ですが、今回、検証したいテーマは「令和婚があったか?」です。

令和が始まったのが2019年5月であったことを踏まえると、2018年と2019年をただ単に比較するのは適切ではないように思えます。

そのため、次に、月別の婚姻数のデータを見ていきます。

 

③ 月別の婚姻数の推移は?

次の図は月別の婚姻数を折れ線グラフで表わしたものです。

月別婚姻数1

グラフより読み取れる情報としては、

  • 2001年以前は、8月が婚姻数が最も少ない
  • 2002年以降、1月が婚姻数が少ない
  • 多くの年で、11月婚姻数が多い

 

などです。

これまで、あまり考えたことがありませんでしたが、月によって婚姻数の傾向があることを認識できました。

そして、11月に婚姻数が多い傾向も気になります。

可能性のひとつとして、11月には11月22日(いい夫婦)があることが考えられます。しかし、1970年時点でも11月の婚姻数が多い事実を踏まえると、1970年代に語呂で入籍日を決める風潮があったかどうかは分からないので、もしかすると他にも理由があるのかもしれません。

さて、令和が始まったのは5月です。次は5月とその前月の4月にスポットをあててデータを見ていきます。

 

④ 4月と5月の月別婚姻数の推移は?

次の図は2000年以降の月別の婚姻数を折れ線グラフで表わし、4月と5月のみハイライトしたもです。

月別婚姻数2

グラフから読み取れる情報としては、

  • 4月と5月の月別婚姻数順位は、年毎に入れ替わっている
  • 2019年5月の月別婚姻数は、2000年以降の過去最高月を記録
  • 2019年4月の月別婚姻数は、前年より減少している

 

でした。

 

このグラフだけでも、2019年4月(平成31年4月)は婚姻予定だったカップルの婚姻届け提出控えが発生し、翌月2019年5月(令和元年5月)に婚姻届け提出ラッシュが発生したことが予想されます。

 

ここまで、結果が明白だと、統計学的に論じなくても、「令和婚は起きた」と結論づけてもよさそうですが、当初の計画どおり「令和婚は起きたのか?」を統計学的に検証していきます。

 

⑤ 2019年5月の婚姻数を検定した結果は?

今回、「令和婚は起きたのか?」というテーマを「2019年5月の婚姻数は例年の5月と比較して増えたか?」という内容に置き換えて、統計学的に確認していきます。

 

検定の前提を次のように設定します。

  • 帰無仮説を「2019年5月の婚姻数は例年と比較し変化していない」と設定
  • 有意水準を5%に設定
  • 例年のデータは、2000年から2018年の5月のデータを使用
  • t検定で検定

 

そして、検定を行った結果は、

  • p値は0000000000000471 (=4.71E-13)
  • p値 < 5%
  • 帰無仮説「2019年5月の婚姻数は変化していない」を棄却

 

となりました。

 

よって、統計学的にも「2019年5月の婚姻数は変化した(=令和婚は起きた)」となりました。

p値の小ささが、5月の婚姻数増加が偶然ではないことの程度を物語っています。

 

まとめ

今回の記事では「統計学的に令和婚はあったのか」というテーマを用いて、統計学的に検証していきました。

婚姻数の統計データはe-statから入手が可能であり、まずはデータをグラフ化し全体感を掴んだうえで、最終的にはt検定を用いて「令和婚は起きた」と結論づけることが出来ました。

今回のように統計的検定を用いることで、定量的な結論を求めることができるようになります。

ただし、今回の事例のように結果が明白な場合は、検定統計量やp値で論じるよりも、グラフで示した方が、多くの人の納得感を得らることもあるので、使い分けも必要になるのかもしれません。

 

じゃあ

 

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パラレルキャリア研究会創設メンバー 岩手県出身。東北大学工学部卒、同大学院工学研究科修了。半導体メーカーに入社後、エンジニアとして半導体製品の企画・開発に従事。30代後半に軸ずらし転職でキャリアをシフト。本業の傍ら独学でPython&統計学を学習中。1児のパパ。趣味は日本酒、ロードバイク。中小企業診断士、SAKE DIPLOMA。