現在、デジタルテクノロジーはこれまでにないスピードで進化を遂げており、中でも社会を変革しうる強大なデジタルテクノロジーがいくつも登場しているという点については社会を変革する5つの「破壊的」デジタルテクノロジーでご説明しました。
デジタルマーケティングの分野でも、これらの新たな技術を使った事例が登場し始めています。新たなデジタルテクノロジーの登場は、これまでのサービスでは解決できなかった顧客の課題解決へとつながり、顧客にとっては今までになかった新たな体験となるのです。今回は、既存のサービスでは解決できなかった顧客の課題を解決すべく登場した、注目のデジタルマーケティングを3つご紹介します。
コンビニでレジに並ぶのが面倒くさい!
→無人コンビニ「Amazon Go」
Amazon Goは、米Amazonが運営する、レジでの決済なしで買い物ができるコンビニエンスストアです。来店客はスマートフォンの専用アプリで表示したQRコードを入り口のゲートにかざして入店し、欲しい商品を棚から取ってバッグに入れて店を出るだけで全てが完了します。
米アマゾン・ドット・コムは2018年1月にシアトルにAmazon Goの1号店をオープンして以来、現在コロナ禍で臨時休業中の店舗も含め米国内で全26店を展開しています。さらに、ロイターや米ブルームバーグによると、初の米国外の店舗として英国ロンドンでレジ精算不要の小売店をオープンする予定であるといい、今後も同様のレジレス店舗を世界中に拡大する可能性があると報じています。
仕組みとしては、店内に設置された複数台のカメラとマイクが来店者の顔や手の動き、店内での移動経路を認識し、誰が何の商品を手に取ったかをAI技術で確認してシステムと連携します。商品棚には赤外線、圧力、重量センサーなど多数のセンサーが設置されており、商品の在庫や移動などをトラッキングします。これらをリアルタイムで専用アプリと連携させることにより、店を出ると同時にAmazon.comのアカウントで決済できる仕組みとなっています。
私も2年ほど前にシカゴのAmazon Goを実際に訪れましたが、レジに並ばなくていいというのが本当に便利でした。あとは、棚から商品をカバンに入れてそのまま持ち帰るという行為が、なにか悪いことをしているようで新鮮でした(笑)。店を出ると同時に、持ち出した商品がAmazon.com内のカートに入り合計金額が見られます。これならば、朝や昼休みなど時間がない時でもレジ待ちでイライラすることがありません。レジに並ばなくていいという点と、決済が楽というのが顧客価値です。このように機械学習エンジンを使って顧客価値を高めるような取り組みは今後どんどん増えていくでしょう。日本での導入も期待されます。
ネットショッピングでは洋服や靴のサイズがわかりにくい!
→Bodygram、ZOZOMAT
「Bodygram(ボディグラム)」は、スマートフォン一つで全身のサイズ採寸ができる、次世代の身体採寸サービスです。基準を満たす洋服を着たまま前・横から撮影したの2枚の全身写真に簡単な情報入力をして送信するだけで全身の推定採寸ができます。以前は専用のボディスーツを着て測る「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」というものがありましたが、こちらは基準を満たしていれば手持ちの洋服で計測できます。
さらに、その靴バージョンが「ZOZOMAT(ゾゾマット)」であり、専用のマットに足を載せて「ZOZOTOWN」の公式アプリで撮影することで、足の計測が簡単にできます。足の長さはもちろん、足幅や甲の高さまでミリ単位で計測が可能。靴をネットで購入する時の不安を解消できます。
これらを使えば、今までなかなかネットで買いにくかった洋服や靴の購入がスムーズにできるようになります。これによりわざわざ実店舗に行かなくても良くなりますので、忙しい人にとっては非常に価値のあるものになります。
なお、「Bodygram」はアパレルメーカーだけではなく、花王のサービス「モニタリングヘルス」にも採用されており、測定した腹囲の数値と花王が所有するアルゴリズムを組み合わせた内臓脂肪レベルの推定もできるようになっています。
旅行先では身軽に移動したい!
→NEC「次世代顔認証システム」
2019年1月から南紀白浜で行っている顔認証を活用した「IoTおもてなしサービス実証」では、事前に顔画像やクレジットカード情報を1回登録するだけで、すでに顔認証決済に対応した12の施設やお店で顔認証を活用したサービスを受けられます。
例えば、キーレスでホテルの部屋に入れたり、お財布を持っていなくてもキャッシュレス決済ができたりと、旅行先の不便を解消してくれるサービスとなっています。これには、和歌山県の先駆的産業技術研究開発支援補助金事業に応募して採択された、日本電気株式会社(NEC)の「次世代顔認証システム」が採用されています。
こういうものができると、カギを持たなくてよくなったりお財布も携帯しなくていいようになります。この点が非常にユーザーにとってメリットがあります。今後もこのようなサービスに機械学習の技術(AI技術)がどんどんと使われるようになるでしょう。
さらには昨年9月、日本航空(JAL)も参画を表明し、NECとデジタル技術を活用した新たな旅行体験の実現に向けた協業を開始。「羽田空港初の顔認証による手ぶら決済」の実証実験を発表しており、今後の展開にも注目です。
特定顧客の解決されていない問題を解決することが重要
新たなマーケティングや事業を創出する際に「特定顧客の解決されていない問題を解決する」という意識は非常に重要です。既存のサービスで全ての人が満足しているわけではありません。その顧客が満足できていない部分を発見し、そのために新たなテクノロジーをどう使うかを考えるという視点が大切なのです。

まとめ:
現在は、新たなデジタルテクノロジーを使って、これまで特定顧客が不便に感じていた課題を解決するというマーケティングが主流となっています。なかでもAI技術を使ったマーケティング手法は数多く見られ、新たな顧客体験を生み出しています。
一方で、これらはかなりスケールが大きな話のため個人ではなかなか実現が難しいものです。個人のデジタルマーケティングトレンドについては、別記事で改めてご説明します。