スモールビジネスの成否を左右する「ファンベースマーケティング」とは

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現在、デジタルテクノロジーはこれまでにないスピードで進化を遂げており、マーケティングの分野でも新たなテクノロジーを取り入れた事例が登場し始めています。新たなテクノロジーを取り入れた事例について、詳しくは新たな顧客価値を創造!いま注目すべき3つのデジタルマーケティングにてお伝えしました。

しかし、それらはスケールの大きな話のため、個人での実現はなかなか難しいものです。ある程度の資本力のある会社でなければ取り組むことすらままならないでしょう。一方で、個人だからこそできる「ファンベースマーケティング」というものも存在します。今回は、個人レベルでのマーケティングのトレンドや「ファンベースマーケティング」についてお話します。

現在は個人での商売がブームに

個人レベルで実現できるマーケティングに関して、近年では個人でソーシャルメディアやYouTube、Webサイトなどを使ってマーケティングできるようになっているのが注目すべき点です。さらに、個人で物を売る、商売をするといった取り組みがブームになっています。その中でも、特にトレンドになっているキーワードが下記の2つです。

トレンド①:D2Cマーケティング

「D2C(DtoC)」とは「Direct to Customer」の略語で、ブランドや商品メーカーなどが自社の商品を消費者に直接販売する仕組みのことを指します。流通業者を通さず自社のECサイトなどで販売するケースが多く、インターネットやスマートフォンの普及に伴い国内外を問わず需要が増大しています。2000年代の後半から徐々に注目を集めてきたビジネスモデルではありますが、ここ最近では特にアパレル業界や化粧品メーカーなどでD2Cを展開する会社が増えています。

このタイミングでD2Cが躍進することになった背景としては、デジタルマーケティング環境が整備されてきたことが挙げられます。プログラミングができなくてもECサイトが簡単に立ち上げられ、またYouTubeやSNSなどを通じてブランドやメーカーが顧客に直接アプローチできるようになりました。自社の製品の魅力を顧客に直に訴求できるようになったことで、業者を挟んで流通経路を確保する必要がなくなり、商品を直接顧客へ届けることが可能になりました。

接点をもった顧客のデータをマーケティング資源として活用できる点も企業側にとっては魅力です。この点も相まって、消費者と企業が直接接点を持つことができるD2Cのモデルが注目されているのです。

トレンド②:ドロップシッピング

ドロップシッピング(Drop Shipping)とは、販売者が在庫を持たないECの一種です。販売者はネット上に自身のショップを開設しお客様から注文を受けますが、商品自体はメーカーや提携する卸売業者からお客様へ直接発送されます。もしくは、日本未発売の海外ブランドのアイテムであれば販売者自身が海外から仕入れて発送するというような方法うもあります。実際にやっていることは非常にアナログではありますが、販売者が販売価格を自由に設定できるため、仕入れ額に対して高い販売価格で売ることができれば、その分利益が多くなります。

ドロップシッピング最大の特徴は、無在庫のため仕入れ費用の負担や在庫過剰のリスクを負わずにECをスタートさせることができる点です。また、在庫管理に投資する必要がないため、比較的低コストでビジネスをスタートさせられます。一方で、商品のメーカーや卸売業者にとっては、オンラインで簡単に販路を拡大できるというメリットがあります。

ドロップシッピングでの販売方法は、販売する商品の種類によって「既存の商品販売型」「オリジナルの商品販売型」という大きく2つのパターンに分けられます。既存の商品を販売する方法は、既存の商品のなかから売りたい商品を探して、ショップに掲載し、販売します。副業でドロップシッピングに取り組んでいる人の多くが選んでいる方法です。気軽にショップオーナーになれることから、できるだけ時間や手間をかけたくない方、今すぐにドロップシッピングをはじめたい方に向いていますが、参入障壁がないため、自身のショップが埋もれないように競合他社と違う商品を探して売るかという点が重要になります。

一方で、「オリジナルの商品販売型」は、自分でオリジナル商品を制作し、ショップやブログで販売する方法です。これであればとオリジナリティがあるので、他者との差別化ができるため、強みがあります。

個人で商売をする上で重要になる「ファンベースマーケティング」

個人でマーケティングをする際に重要になるのが「ファンベースマーケティング」です。ファンベースマーケティングとは、自身のサービスや商品の「ファン」を対象としたマーケティングで、ファンを大切にすることで中長期的に売上や事業価値を高めるという考え方です。ここでいうファンとは既存顧客、あるいは優良顧客と呼ばれる層を指します。

ファンベースマーケティングを理解するうえで重要になるのが「パレートの法則」です。パレートの法則とは、80:20の法則とも呼ばれる自然・社会現象で、ビジネスの世界では「企業の売り上げの8割は、全体に占める2割の顧客がもたらしている」といわれます。この考え方がファンベースマーケティングの下地になっています。まず2割のコアな顧客をしっかりと固めた上で、新規の顧客開拓を進めることが大切という考え方です。

現在のコロナ禍において、フランチャイズのお店よりも自分の行きつけのお店に人が足を運ぶ傾向にあり、ファンの大切さが再認識されていると言われています。個人で商売をする場合もまさしく同様で、自分のファンになってくれる人を見つけて増やしていかない限り難しい立場になるという側面があります。現在では新規顧客の獲得がどんどんと難しくなっているので、顧客をファンに育てない限り、日本でビジネスをするのはなかなか難しいでしょう。

ただ一方で、顧客をファンにするには地道な努力が必要です。1人のファンを作るためにはお金や時間などのコストを要し、全体がうまく回りだすためには1年や2年では難しく、3年から5年、下手をすれば10年程度は必要になります。しかしひとたびファンになってもらえれば、商品やサービスを長く使い続けてくれたり、来店頻度が上がったり、より価格の高いものや高いグレードのものを買ってくれたりするため、顧客商売価値が高まります。極端な話をしてしまえば、ファンと信頼関係が構築でき、こちらが提供するサービスや商品が相手にとって唯一無二の存在になってしまえば、最終的には何を売っているか、何のサービスを提供しているかはあまり重要視されず、「その人だから応援する」という方向性にシフトしていきます。また、ファンは仲間を連れてきてくれるので、ファンを増やすことが新規顧客を増やすことにもつながります。

この「ファンベースマーケティング」はその性質上、会社よりも個人のほうがやりやすい手法です。会社で「ファンを大事にしましょう」といっても、大きな規模の会社では株式市場や投資家から求められる短期的な売上や利益を達成する必要があるため、1人のファンを作るためにそこまで時間を使えません。また、会社の規模が大きくなると応援する相手の顔が見えなくなるため、個人にぴったりのマーケティングなのです。

まとめ:

現在の個人のマーケティングとしては、D2Cやドロップシッピングがトレンドとなっています。これらの手法を取り入れたサービスを構築しつつ、ファンを育てるという考え方で商品サービスを設計していくファンベースマーケティングが、コロナ禍にあってより重要になっていると言われているのです。

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ABOUTこの記事をかいた人

ビジネスパーソンのリスキングを支援するパラレルキャリア研究会を主宰。 【経歴】 京セラ→アマゾンジャパン→ファーウェイジャパン→外資系スタートアップ→独立(起業)。早大商卒、欧州ESADEビジネススクール経営学修士(MBA)。「デジタル戦略コンサルティング(社外のデジタル戦略参謀)」、「講師業」、「Webアプリ開発」、「データサイエンス」を生業にするパラレルワーカー。