別記事 「あなたはいくつ知っている?統計学の関連資格12種」では、統計学に関する資格を紹介しました。
では、これから統計学を学び始めようと考えている人にとって、どの資格取得を目指すのがいいと言えるのでしょうか?
今回の記事では、
- 統計検定2級を学ぶことで得られるメリットを知りたい
- 統計検定2級合格で得られるメリットを知りたい
という人に向けて、統計学初学者に統計検定2級をすすめる3つの理由を紹介していきます。
統計学初学者に統計検定2級をすすめる3つの理由
統計検定2級を学ぶことで得られる3つのメリット
本記事のタイトルにある通り、数ある統計学の資格試験の中で、お薦めしたい資格試験は、日本統計学会が認定する「統計検定2級」です。
統計検定2級を学ぶことで得られるメリットは3つあります。
- データサイエンスで必要となる統計学の基礎を学ぶことができる
- 文系出身者でも統計学で必要となる数学的な素養があることを示すことができる
- 将来増えていく統計学ネイティブな若手ビジネスパーソンと対等に会話ができるようになる
① データサイエンスで必要となる統計学の基礎を学ぶことができる
統計検定2級を学ぶ最大のメリットは、データサイエンスや機械学習で必要となる統計学の基礎を学ぶことができることです。
統計学の基礎は、あなたが社内外のデータサイエンティストと会話をする場面においても、あなた自身がデータ分析者としてプロジェクトメンバーに対して分析結果を説明する場面であっても、必要となるスキルとなります。
具体的には、どのような形で統計学の知識が必要となるのでしょうか?
はじめに、あなたがプロジェクトメンバーから報告を受ける場合を考えてみます。
あなたがメンバーから「統計量tを用いて、有意水準5%で帰無仮説を検定した結果は….」と、報告を受けた場合に、もしも、あたなが統計学の基礎を理解していないと、
- 統計量tって何?
- 有意水準5%ってどういう意味?
- 帰無仮説って何?
などのように、言葉の意味すら分からず、その報告の内容や分析結果の妥当性が判断できない状態になってしまうことが考えられます。
このような状態では、相手側の主張が正しくない、あるいは、相手にとって都合がいい方向に結論がもっていかれているような場合であっても、適切な指摘をすることができず、言いくるめられてしまう可能性が考えられます。
次に、あなたがデータ分析者の立場でプロジェクトメンバーに報告を行う場合も考えてみます。
今後はあなたが「統計量tを用いて、有意水準5%で帰無仮説を検定した結果は….」と、プロジェクトメンバーに報告をします。その際に、メンバーから
- 何で有意水準を5%に設定したの?5%で妥当なのか?
- なぜ統計量tを使ったのか?
と、質問を受けた場合、あなたは適切に答えられる自信がありますでしょうか?
分析結果の結論だけでなく、分析の過程や前提についても、しっかりと説明できないと、その分析結果が価値のないものになってしまう可能性があります。
後者のようなシチュエーションは、データエンジニアリングだけを学んでいた場合に陥ってしまうことが考えられます。
というのも、Pythonなどのデータ分析の教科書では、暗黙のルールかのように「有意水準5%設定」で説明をしているものがあります。そのため、学習者は「有意水準5%設定」に対して疑問や関心を持つことなく、問題の解き方やプログラミングの書き方にのみ学習の焦点が当たってしまいがちになってしまいます。
そして、有意水準5%設定に対して疑問を持つことがないまま、実際の分析の場で、学んだ分析の手法を活用しようとし、有意水準5%設定で分析を行うと、出鼻をくじかれる結果になりかねないということです。
このような理由より、データに関わる仕事をする人にとって、統計学の基礎知識は必須スキルであり、統計学の基礎を学ぶことができる統計検定2級を学ぶ意義は大きいと言えます。
② 文系出身者でも統計学で必要となる数学的な素養があることを示すことができる
別記事「文系ビジネスパーソンこそ統計学を学ぶべき理由」でも紹介している通り、統計学は理系ビジネスパーソンに限らず、文系ビジネスパーソンにも必要なスキルとなります。
一方で、統計学では、数式を扱うことから、数学的な素養が必要となります。
もし、あなたが、文系出身でデータサイエンスの実務経験がない状態からデータサイエンティストを目指すのであれば、統計学2級を取得することは、統計学で求められる最低限の数学的な素養があることを示すことに繋がります。
データサイエンティスト・データエンジニア・データアナリストなどの求人において、統計に関する知識として統計検定2級を必須あるいは歓迎と掲載する求人を見かけることがあります。
転職においては、実務経験が重視される場合が多いため、統計検定2級をもっていることが採用の直接的な決め手になることはありませんが、統計検定2級がひとつのものさしとして使われていることは事実となるため、統計検定2級はあった方が良い資格と言えます。
③ 将来増えていく統計学ネイティブな若手ビジネスパーソンと対等に会話できるようになる
あなたがデータサイエンスや機械学習の分野に興味を持たないビジネスパーソンだったとしても、統計検定2級を学ぶメリットはあります。
それは、数年後にあなたと一緒に仕事をすることになるだろう、現在の小学生から大学生の多くは、統計学という知識を備えた状態で社会人になる可能性があるからです。
文部科学省が平成29年・30年・31年の学習指導要領の改訂において、下記の通り、統計教育の充実化を計る改訂が行われています。
- 小・中学校
<理数教育の充実>
必要なデータを収集・分析し、その傾向を踏まえて課題を解決するための統計教育の充実(小:算数、中:数学)※ 文部科学省「小・中学校学習指導要領等の改訂のポイント」より抜粋
- 高等学校
<理数教育の充実>
必要なデータを収集・分析し、その傾向を踏まえて課題を解決するための統計教育の充実(数学)※ 文部科学省「高等学校学習指導要領の改訂のポイント」より抜粋
小中高において、明確に統計教育を充実させる方針があることが分かります。
また、大学教育においても、2017年に日本発のデータサイエンス学部を国立滋賀大学が設置して以降、データサイエンス教育に力を入れている大学は増えてきております。
このような流れがあることより、将来、統計学の素養をもった若手ビジネスパーソンは増えていくことが予想されます。
その昔、パソコンが使えないおじさんが会社にたくさんいた時代があったのと同じように、統計学の話が通じない・データの見方が分かっていないおじさん・おばさんが会社にいる、と言われる時代が来るかもしれないということです。
ここまで極端なことは自分の身の回りでは起こらない、と思われた方がいると思います。
しかし、あなた自身が優秀であり、優秀な人材が集まりやすい会社で務めていたとするのであれば、数年後に、あたなの部下や後輩として、統計学を学んだ優秀な新入社員が配属される可能性は十分に考えられると言えるのではないでしょうか。
④ (番外編)大学の単位や入学試験で有利・必須となる
番外編として、4つめのメリットとして、ビジネスパーソンではなく学生が統計学を学ぶメリットを紹介します。
データサイエンス教育に力を入れている大学が増えていることは前述したとおりですが、統計検定2級を取得することが、大学生活に有利に働くケースがあります。
たとえば、香川大学の経済学部や東洋大学経済学部など、いくつかの大学(学科)では、統計検定2級合格で単位を認定する制度を始めています。
また、滋賀大学データサイエンス研究科や横浜市立大学データサイエンス研究科データサイエンス専攻の、博士前期課程(修士課程)の選抜試験においても、統計検定2級の点数が、選別試験の点数とする流れも始まっています。
言うまでもなく、履歴書にも書ける資格であると言えるため、大学生にとって統計検定2級に合格することは、単位もとれて、履歴書にも書くことのできる一石二鳥のメリットがあると言えます。
この流れを別の視点から見ると、数ある統計学の資格試験の中で、統計検定2級が統計学の知識を証明する資格試験のデファクトスタンダードとなっていることが分かります。
まとめ
今回の記事では、統計検定2級を学ぶ3つのメリットを紹介していきました。
統計検定2級を学び取得することで得られるメリットは次の3つです。
- データサイエンスで必要となる統計学の基礎を学ぶことができる
- 文系出身者でも統計学で必要となる数学的な素養があることを示すことができる
- 将来増えていく統計学ネイティブな若手ビジネスパーソンと対等に会話できるようになる
統計学を学んでみようと考えている方は、統計検定2級の合格を目標として、学び始めてはいかがでしょうか?
じゃあ