ビジネスの現場におけるデータサイエンスのメリット「経営コンサルタント編」

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文系ビジネスパーソンこそ統計学を学ぶべき理由の中で、ビジネスに精通した文系ビジネスパーソンにとって、統計学は相乗効果が高いと述べました。ビジネスの知識と統計学の知識を両方備えている文系ビジネスパーソンは即戦力として希少価値が高く、現在ではインターネット企業を中心に需要が高まっています。

この流れを受けて、今後は様々な分野でデータサイエンスが活用されていくことになります。マーケティングの分野にデータ分析を取り入れるメリットについてはビジネスの現場におけるデータサイエンスのメリット「 マーケティングサイエンス編」でお話しました。今回は「経営コンサルタント」の分野で、データ分析がどのようなメリットをもたらすのかについて掘り下げます。

今後はコンサルティングにデータの分析結果を活かす手法が主流に

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経営コンサルタントは、人事や生産管理など会社に関する幅広い情報を俯瞰しながらアドバイスを行いますが、データサイエンスを使えるかどうかによってアドバイスの精度が大きく変わり、また説得力にも差が出ます。現在の経営者の多くを占める50から60代の方々にはデータサイエンスの話はやや響きにくいですが、最近ではベンチャー企業を中心に20代から30代といった若い世代の人達も経営者になりつつあります。これらの若い世代の経営者達と仕事をする上では、データに裏付けされたコンサルティングが必須となっていくでしょう。

実際に、ボストン・コンサルティング・グループやマッキンゼー・アンド・カンパニーなど、大手のコンサルティング会社もデータサイエンティストを採用しており、データ分析を取り入れたコンサルティングを提供しています。日本だけではなく、世界的にもこのような手法が主流になりつつあるのです。

データサイエンスがメリットを発揮するコンサルティングの分野

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人事(採用/能力開発/評価/配置)

人事面では、主に採用や能力開発、評価制度、配置転換などにおいてデータ分析が役立ちます。社員の学歴や出身学部、年齢、保有資格、社内でのこれまでの年次評価やキャリアパス、能力開発の経験などあらゆるデータを使ってグルーピング(クラスタリング)を行い、その会社で高いパフォーマンスを発揮できる人材のタイプを見分けていきます。これはあくまで確率の話であり、必ずしもその通りになる訳ではありませんが、自社に合う人材と合わない人材、能力を発揮できる人材とできない人材を、採用の時点である程度ふるいにかけることができます。その結果、離職率の低下にもつながります。

また、これにより管理職などそれぞれの役職ごとや部門単位で能力を発揮やすい属性も見えてきます。人材の登用や配置については人事部の判断による曖昧な部分が多いので、人事評価や360度評価などによりきちんと数値化することで、「このポジションにはこういう人が向いている」という客観的な基準を作ることができます。基準ができれば、会社も側も社員に会社の基準に合った能力開発を呼びかけることができ、それを評価制度に組み込んだりすることもできます。このような社員の人事データや行動データを収集・分析して、人材活用のための知見を得る技術は「ピープルアナリティクス(People Analytics)」と呼ばれています。

一方で、これは1年や2年のスパンでは分析ができず、5年から10年程度のデータを蓄積する必要があります。その点では長い目で見なければいけませんが、このような手法を持っている会社と、人事部のさじ加減で場当たり的に人事を進めている会社とでは、長期的に見てパフォーマンスに差が出てくることは間違いありません。コンサルタントもこのようなモデルなどを提案して導入し、長期的に会社のパフォーマンスを上げていくことが求められます。いずれにせよ、このようなコンピテンシーモデルを作るに当たっては、等級制度の仕組みや評価制度、賃金制度の仕組みなどを理解しておく必要があります。

生産管理(ロットサイズ、生産量、故障予知)

ビジネスの現場におけるデータサイエンスのメリット「 マーケティングサイエンス編」でご紹介したBTYDモデルなどを使って顧客の離反や売上予測ができれば、生産量が予測できます。来月はこの程度の量を生産しましょう、これくらいのロットサイズで生産しましょう、というように売上予測を生産計画に反映できるのです。これにより、工場も生産の段取りがしやすくなります。

またこのBTYDモデルを応用すれば、機械があとどれくらいで故障するのかという故障予知にも使うことができます。故障を予知できれば、適切なメンテナンス頻度の採用や、新しい機械の購入などの対策が打てます。機械の故障は生産ロスや生産効率の低下を引き起こし、人件費だけではなく原材料の無駄につながるリスクの高いものですが、現在このような予知は職人しかできません。また市販のパッケージソフトを用いたところで、製造している商品も異なれば機械自体の摩耗具合などもそれぞれ異なりますから、精度の高い予測は期待できません。そのため、故障の予知や生産量の予測を踏まえた提案をコンサルタントができることには価値があります。

管理会計(在庫量、発注、ロス)

ロットサイズや生産量が分かれば、今度はどの程度の原材料を在庫として持っていたほうが良いか、どのくらいの原材料の発注頻度や発注量にしておいたほうがいいかが分かります。さらには、原材料のロスを抑えたりすることもできます。この、仕入れて生産して販売するという一連の流れが分かっていれば、販売予測から遡ってそれぞれの計画が立てられるのです。現在は販売予測の精度が低いため、生産と仕入れの予測が難しい状態です。販売予測の精度が高まることで、在庫や生産量、仕入れ量を導くことができます。

これらの予測は、時間をかけ予測と実績を比較し予測モデルの精度を高めていくことになります。結果は、「多い時にはこれぐらい、少なくてもこれぐらい」というように、上下何%の範囲にこれくらいの確率で収まるというように算出されるため、両方の場合に対応できるようになります。商品の仕入れにおいこのような判断ができると現場の対応も変わり、在庫や生産ロスは大幅に減少すると思います。そのため、これらのことが提案できるかどうかによって、コンサルタントが会社に提供できる価値に差が出ます。

財務予測(売上、経費、利益)

最後に、販売予測ができると財務予測もできるのではないかと思います。上場している株式会社は来期の収益予測などを株式市場に公開していますが、その中身は実際のところ、現場の責任者が大体の経験に基づいて算出している状態です。しかし、これに関しても需要予測や販売予測が顧客単位でできるようになれば、それを踏まえた売上予測の精度が高まるのではないかと思います。そして何より、人間が担当する業務が減ります。もちろん、需要予測の結果をそのまま表に出すわけにはいかないにせよ、たたき台となるものをAI技術・モデリングによって作成し、それを人間が修正していくという流れが可能になります。現在、エクセルの表を元に何時間も会議に費やしている時間が大幅に節約できます。

会社にとって大切な売上、経費、利益のうち、売上予測が一番不安定です。変動費は売上に連動し、また固定費は自社である程度コントロールがでできるため、予測はそこまで難しくありません。この、一番見通しが立てにくい売上について予測の精度が高まれば、財務予測も自動化できます。これにより、経理部門や各部門の予算計画立案の業務負荷が大きく軽減されます。

まとめ:

コンサルタントは経営者の目線で物事を判断するため、扱う情報は多岐にわたります。そのの中でもこれまで現場担当者の勘や経験則にしか頼れなかった部分をデータ分析により客観的に評価することにより、これまでにない価値を会社に提供できることになります。

これまでは売上予測が不安定だったため、それに伴って生産量や仕入れの部分も予測が不安定でした。販売予測の予測精度が高まることは、営業やマーケティングにはもちろんのこと、会社全体に大きな影響を及ぼします。データ分析の知識や予測モデルを提案できることは、経営コンサルタントとしての大きな強みとなるでしょう。

その他の分野におけるデータサイエンスのメリットついてはこちら
・マーケティングサイエンス編
・Web系エンジニア/システムエンジニア(プログラマ)編
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ABOUTこの記事をかいた人

ビジネスパーソンのリスキングを支援するパラレルキャリア研究会を主宰。 【経歴】 京セラ→アマゾンジャパン→ファーウェイジャパン→外資系スタートアップ→独立(起業)。早大商卒、欧州ESADEビジネススクール経営学修士(MBA)。「デジタル戦略コンサルティング(社外のデジタル戦略参謀)」、「講師業」、「Webアプリ開発」、「データサイエンス」を生業にするパラレルワーカー。