企業家や個人事業主が「簿記」を学ぶことで得られるメリット

企業家や個人事業主が「簿記」を学ぶことで得られるメリットのアイキャッチです

次世代を担う30代から50代のビジネスパーソンにとって、「ファイナンシャルリテラシー」が大切になるという点については次世代ビジネスパーソンがファイナンシャルリテラシーを高めるべき理由にてお話しました。そして、ファイナンシャルリテラシーを高めるためには「簿記」の知識が出発点になるということについては、ファイナンシャルリテラシーを高めたい社会人が「簿記」を学ぶべき理由にてお話しています。

ファイナンシャルリテラシーを高めたい社会人が「簿記」を学ぶべき理由において、簿記を学ぶことで財務諸表への理解が深まり、最終的に節税や資産運用にも役立つとお伝えしました。今回は主に企業家や個人事業主が、簿記を学ぶことで得られるメリットについてお伝えします。

簿記のメリットは家計簿をつけるメリットと同じ

まず最初にお伝えしたいのは、簿記のメリットというのは基本的に家計簿をつけるメリットと一緒だということです。「今月はやけに支出が多いな」と思った時に、家計簿に支出の記録をつけておくことで「何にお金を使ったんだろう」と疑問に思った際に、すぐに原因を探れます。また「我が家はこれに対する支出が多いんだ」「我が家にはこういう資産があるんだ」というのも分かるようになりますね。これらをまとめると、家計簿をつけるメリットは下記のようになります。

・投資がアウトプット(成果・効果)に合っているか
・現在の収入と支出のコントロール
・将来への備え/計画
・第三者からの信用

簿記もこれと同じで、簿記の知識があれば会計上の問題の原因を細かく分析できたり、また資産の把握などにも役立ちます。会社員の方にはあまり関係がないかもしれませんが、企業家や個人事業主には重要なポイントです。具体的に簿記や財務諸表を学ぶ具体的なメリットを4つ見ていきましょう。

簿記や財務諸表を学ぶメリット①:節税対策

個人事業主や企業家、投資家にとって、簿記や財務諸表の知識は節税対策に大きく関連します。税務申告の際にはもちろん税務会計の知識も必要となりますが、税務会計も出発点は会計上の利益であり財務会計(決算書)です。税務会計の元となる決算書や簿記を知っておくことで、今行おうとしている行動が簿記や財務諸表にどのような影響を与え、節税に結びつくのかが分かるようになります。

例えば、「個人事業主は要チェック!法人化による税制上の3大メリット」でお伝えしたとおり、出張旅費日当を会社は経費として所得から控除でき、受け取る側(個人)も非課税で受け取れます。また、社用車を購入した場合に、来年以降は減価償却をしていって、将来的にほぼ全額費用として損益計算書で処理されて……と、利益、費用としてどのように計上されていくのかという流れが分かります。簿記の知識があると発生する仕訳がわかるので、会社の支出の一つ一つについて、そのお金を使うべきか使わないか、この取引をすると将来的に会計上にどんな波及効果があるのかというのが分かります。

簿記や財務諸表を学ぶメリット②:投資の意思決定(人・モノ・設備・土地/建物)

①と隣接する話ですが、人を雇う、物や設備を買う、土地や建物を借りたり購入したりする際にも仕訳が分かっていると、その行動が将来にわたってどのような影響を及ぼすのかが分かります。そのため、いろいろと考慮したうえでその行動をとるかとらないかという判断ができます。「お金の知識を得たい社会人がまず「簿記」を学ぶべき理由」でもお話したように、簿記はダイエットにおける日々の運動や食事の記録のようなものですので、記録しておくことで将来的にどのような影響をもたらすかを理解しやすく、より判断しやすくなるということです。

簿記や財務諸表を学ぶメリット③:資金調達(株式・負債)

簿記を知っておくことで、会社や個人でお金を調達する際に、銀行から借りた方がいいのか、クラウドファンディングでお金を集めた方がいいのか、株式会社であれば株式を発行して株主を募ったほうがいいのか、その時の状況下に応じたメリットとデメリットが分かります。例えば、株式を発行してお金を調達した場合は、調達した資金を返済する義務はありませんが、基本的には配当金を払わなければいけません。そのため、一般的には銀行からお金を借りるよりも調達コストは高いです。理由は、銀行からの借り入れについては元本返済義務がありますが、株式は元本の返済義務がないため、銀行の利子と比較して高い配当金を株主に求められるからです。簿記の知識があれば、将来におけるキャッシュフローを考慮に入れて、利子を払ってでも銀行からお金を借りたほうがいいのか、配当金を払ったほうが長期的に見てメリットがあるのかを検討できます。

簿記や財務諸表を学ぶメリット④:第三者からの信用

簿記や財務諸表に関する知識があると、第三者から信用されやすいというメリットもあります。自分で事業活動を行っている場合に、会社のお金の流れをきちんと理解し、相手に客観的に説明できることは信用につながります。一方で、会計の知識が全くない経営者は相手から「この人と取引をして大丈夫かな」と思われてしまう可能性も否定できません。

まとめ:

簿記を学ぶ具体的なメリットを一言でまとめるならば、日々の活動が財務諸表にどんな影響を与えるのかを意識できるということになります。そのことは、ご自身の事業の節税対策や資金調達の面でも有利に働きます。また第三者からの信用面においても身につけておくべき知識と言えるでしょう。ファイナンシャルリテラシーを高めるためには、簿記や財務諸表の知識が不可欠なのです。

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ABOUTこの記事をかいた人

ビジネスパーソンのリスキングを支援するパラレルキャリア研究会を主宰。 【経歴】 京セラ→アマゾンジャパン→ファーウェイジャパン→外資系スタートアップ→独立(起業)。早大商卒、欧州ESADEビジネススクール経営学修士(MBA)。「デジタル戦略コンサルティング(社外のデジタル戦略参謀)」、「講師業」、「Webアプリ開発」、「データサイエンス」を生業にするパラレルワーカー。