これまで、ファイナンシャルリテラシーを高めたい次世代のビジネスパーソンにとって、「簿記」の知識が必須であるという点については、ファイナンシャルリテラシーを高めたい社会人が「簿記」を学ぶべき理由にてお伝えました。そして、簿記を学ぶ個人的なメリットについては、企業家や個人事業主が「簿記」を学ぶことで得られるメリットにてお伝えしています。
加えて、簿記と財務諸表の知識があれば、自社だけでなく他社をも客観的に評価することができます。今回は、簿記や財務諸表の知識を使って第三者を評価できるようになるという点についてお話します。
簿記と財務諸表は他社を客観的に評価するためのツール
「財務三表は企業の「事業モデル」と「健全性」を読み取るための診断書」でもお話したように、貸借対照表(バランスシート、B/S)、損益計算書(P/L)と、キャッシュフロー計算書を連動させることにより、個別企業のストーリーが見えてきますし、財務諸表は同業他社の強みや弱みを知る格好の手段でもあります。これら財務諸表の理解には簿記の知識が必須であるため、簿記を学ぶことは他社評価の点でも重要になるといえます。もちろん、どの会社も帳簿までは公開していませんが、財務諸表を見ながらあれこれ推察することが可能になるのです。簿記を学び、財務諸表の分析ができることで期待できる他社評価の例は次のとおりです。
1.企業価値評価(株式評価)
簿記や会計の知識があれば、貸借対照表(バランスシート、B/S)や損益計算書(P/L)など財務諸表の数字の持つ意味がわかり、さまざまな角度から分析できるようになります。そして、現在の株価がその会社の価値に比べて割安なのか割高なのかという会社の価値も分かるようになります。これは、競合他社を評価する際はもちろん、個人的な株式投資などの際にも役立ちます。
2.コンサルティング
財務三表は企業の「事業モデル」と「健全性」を読み取るための診断書でもお話した通り、財務諸表からその会社の戦略や強み、弱みを分析できます。例えば、B/SとP/Lの関係性を見れば「この会社は見た目はあまり太っていないけれど非常に筋肉がある」「この会社はお相撲さんのようにいっぱい食べたりとかお金を調達しないとパフォーマンスを出せない」「この会社は水泳選手やスピードスケート選手のようにピンポイントで筋力がある」というそれぞれの会社の特徴が分かります。
また、B/SとP/Lから棚卸資産回転期間、売上債権回転期間、支払債務回転期間を算出すれば、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)という、企業が商品を販売してから現金化するまでにかかった日数を知ることもできます。簿記の知識がベースにあれば、このような分析も独自に行うことができ、企業のコンサルティングなどにも役立つのです。
3.データサイエンス
データサイエンス領域においても、会社の財務データはデータ分析の対象となります。業績のよい会社の特徴や需要予測、最適在庫量(原材料、仕掛品、完成品)、最適な発注頻度や発注量など財務諸表や簿記レベルの勘定科目はデータとしてよく登場します。その際に簿記や財務諸表の知識がなければ、それぞれの数字が意味するものが分かりません。データサイエンスを志す場合にも、簿記や財務諸表など会計知識を得ておくことは必須です。
4.株式投資
先にお話した「1.企業価値評価(株式評価)」の内容とも一部重複しますが、簿記や財務諸表の知識があることで、適正な企業価値が評価でき株式投資の際の判断材料になります。こちらについては「企業家や個人事業主が「簿記」を学んで得られるメリット」で詳しくお話しています。
まとめ:
簿記と財務諸表の知識は自社についてだけではなく、他社評価や株式投資においても重要です。投資判断が必要な投資家はもちろん、競合他社の分析が必要な企業家や個人事業主にとっても重要なスキルのひとつです。