今後はモバイルマネーが主流に!?キャッシュレス後進国の我々が知っておきたいキャッシュレス決済のいま

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近頃になってようやくQR決済、モバイルマネーなど様々なキャッシュレス決済方法が普及しつつある日本ですが、現在でも日々の決済方法の主流は現金であり、世界的に見ればまだまだ波に乗り遅れている「キャッシュレス後進国」です。

一方で、世界に目をやればモバイルマネーや仮想通貨などが一つの潮流になりつつあります。今後、仮想通貨や電子通貨を支えるテクノロジーが発展し、キャッシュレス決済本来のメリットを活かせるようになれば、一般消費者にとってもはや銀行は不要になるかもしれません。今回はキャッシュレス決済のなかでも注目が集まる仮想通貨や電子通貨、モバイルマネーの現状をお話します。

仮想通貨と電子通貨(電子マネー)の違い

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仮想通貨と電子通貨(電子マネー)は似ているようで、実は非なるものです。ビットコインやリップルなどに代表される仮想通貨は、それ自体が独自の貨幣であり、日本円や米ドルなどある国の通貨と紐付いているものではありません。一方でPASMOやSuica、LINE Payといった電子通貨は形は違えど日本円です。以上のことから、電子通貨は国内で使う分には問題ありませんが、海外との取引には為替レートや外国送金手数料の観点から仮想通貨が便利ということになります。

一方で、電子通貨のメリットとしては、値上がりや値下がりがなく、相場が安定している点が挙げられます。先程もお話したように電子通貨は日本円や米ドルなど、なにがしかの通貨に紐付いているため取引は安定しています。仮想通貨はどの国の通貨にも紐付いてないためそれ自体の価値が上下する投機的なところがあり、安定しない現状のままでは通貨として成り立ちません。このようにそれぞれにメリットとデメリットがあるため、現状では両者をうまく使い分ける必要があります。

QRコード決済は今後衰退する!?

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電子通貨の中には支払い時にQRコードを利用するQRコード決済もあります。QRコード決済には、店側が提示したQRコードをユーザーがスマートフォンのアプリを通して読み取る静的な「ユーザースキャン方式(店舗提示型)」と、ユーザーがQRコードを生成し店側が専用端末で読み取る動的な「ストアスキャン方式(消費者提示型)」の2種類があります。一部、SuicaやPASMOのようにQRコードがなくICタグで支払えるのもありますが、このQRコード決済はApple Watchなどの非接触型の非接触型の決済サービスに比べてユーザー側に手間がかかるたため、今後は衰退していくのではないかと思っています。

店舗側にとっては静的なQRコード決済であれば、専用の読み取り端末が不要になるというメリットがあります。読み取り端末は高額なうえにクレジットカードと同様にQRコードの種類によって異なる端末が複数台必要になる場合もあります。その点、静的QRコードであれば紙にQRコードを印刷しておくだけで、ユーザーがQRコードをスキャンして金額を入力して完結するため、店側の負担は軽減されます。

しかし、ユーザーの側からすれば、動的であれ静的であれいちいちスマートフォンの画面を店側に提示しなければならず、利便性はあまり高くありません。また、中国などでは静的QRコードを別のQRコードにすり替え、自らの口座に入金させるなどの犯罪例もあります。これらのことから、いずれこのQRコード決済は非接触型の決済サービスの普及に伴って衰退するのではないかと考えています。

南アフリカで急拡大しつつあるモバイルマネー

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モバイルマネーとは、一般社団法人情報通信技術委員会の定義によれば「携帯電話やタブレットのようなモバイル装置を使うことで実施する金融取引あるいは金融サービス」とされています。このようなサービスは、銀行口座と直接結びついていることも結びついていないこともあります。

別記事書籍『ファクトフルネス』と現地で見たガーナの経済成長と課題において、ガーナでは決済手段としてモバイルマネーが浸透している点について触れましたが、ケニアでも同様にモバイル決済が主流であり、GDPの4割がモバイル決済となっています。ケニアでは子どもから老人までがスマートフォンを所持しており、ケニアの通信会社Safaricom(英語版)と、南アフリカ共和国のボーダコムによる「Mペサ(M-Pesa)」という携帯電話を利用した送金サービスをほぼ全国民が利用しています。一般的にケニアの人々は銀行口座を持っていないため、Mペサが一般的な決済方法となっているのです。

このMペサがすごいのは、モバイルマネーを現金化できる点です。これは日本ではまだ一般的ではありません。メルペイも売上金を振込申請することはできますが手数料が必要です。しかしMペサは、身分証明をすれば手数料も必要なく現金化することができます。電気やガス、水道の料金の支払いもできますし、路上の屋台でもお互いにスマホを持っていれば、Mペサで支払いが完結します。人にもよりますがローンを組むことも可能です。自動支払いのような引き落とし方法も選択できるので、我々が普段の生活で発生するお金のやりとりは、モバイルマネーでほぼ完結できてしまいます。

ケニアを始めとしたアフリカ諸国でモバイルマネーが浸透している理由については「リープフロッグイノベーション」という概念が理解の一助になります。これは、社会インフラが整備されていない新興国で、先進国が辿ったイノベーションプロセスを飛び越えて、新規サービスが一気に広まることを指します。例えば電話の場合には、普通であれば固定電話から携帯電話、スマートフォンと発展していきますが、アフリカは固定電話の回線を引くことが難しいため、そのプロセスを一気に飛び越してスマートフォンが普及しました。さらに、日本では既得権益者との兼ね合いから新たな技術やサービスが普及しにくい土壌がありますが、その点既得権益者や国の規制が少ないアフリカではイノベーションが起こりやすいのです。

まとめ:

日本は現金が好まれる文化であり、そのため現在でも現金払いが主流となっています。しかし、今後はお話したケニアの例のように、日本もモバイルマネーを含めたキャッシュレス化が加速するものと思われます。

もちろん、日本人が危惧するように現在のキャッシュレス決済にもメリットとデメリットがありますが、テクノロジーの発展に伴い、将来的にはキャッシュレス決済のデメリットはほぼなくなると思われます。そのようになれば、今後はますます我達が現金を持つメリットがなくなり、現金は象徴としての扱いとなるかもしれません。

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ABOUTこの記事をかいた人

ビジネスパーソンのリスキングを支援するパラレルキャリア研究会を主宰。 【経歴】 京セラ→アマゾンジャパン→ファーウェイジャパン→外資系スタートアップ→独立(起業)。早大商卒、欧州ESADEビジネススクール経営学修士(MBA)。「デジタル戦略コンサルティング(社外のデジタル戦略参謀)」、「講師業」、「Webアプリ開発」、「データサイエンス」を生業にするパラレルワーカー。