デジタルトランスフォーメーション(DX)時代に求められるマインドセット

DX時代に求められるマインドセットのアイキャッチです

現在、多くの企業においてデジタル技術を活用した業務やビジネスモデルの変革「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が進んでいます。私はこれまでIT企業やWeb企業で働いてきましたが、当時と比較して、最近ではIT業界で求められるスキルが大きく変わってきていると感じます。

IT業界だけでなくデジタルトランスフォーメーションが進む業界において、現在から将来にわたってどのようなマインドセットが必要なのかを今回は考えます。

求められるスキルの変化

デジタル業界における専門家としてはWebエンジニア、システムエンジニア、Webマーケター、Webデザイナーなどが存在しますが、正直なところ、これらの分野はそれ単体では誰でもできてしまうものです。極端な話、大学に行く必要もなくYouTubeなどで知識を習得することもできるため、参入の敷居が非常に低いです。単体での仕事はもちろんありますが、新規参入者が多いため単価がどんどん安くなるというリスクがあります。

さらには、これらの分野は経験の積み重ねによるレバレッジが働かない分野でもあります。誰でも5年から10年程度の時間を投じればある程度のレベルにまでは到達しますが、そこから先はあまり伸びしろがありません。そのため、20代から30代前半であればそれぞれの分野に精通したことだけをやっていっても問題はありませんが、40代、50代になった場合に1つの分野だけを頑張っていても、成熟度は変わらなくなってきます。それどころか、新たな技術もどんどん登場するため、学習が早い若い人に有利に働くという側面もあります。

理系と文系のハイブリッド人材の希少性

一方で、今後はインターネット企業かどうかを問わず、どの業界でもWebサービスやスマホアプリ、システム開発をする必要に迫られる状況になります。そのため、例えば経営者が人事も財務もマーケティングも把握しているのと同様に、ITの分野でもシステム開発、Webマーケティング、プログラミング、統計学、データサイエンスなどを横断的に理解できる人材が必要になってくるのです。

これまではそれぞれが分業で成り立っていましたが、今後はこれらを横断的に把握できる人がいないと、会社の経営戦略に断片的なデジタル戦略しか存在しない状況になります。システム開発などには理系の情報技術の知識が必要である一方、戦略立案などには文系的な素養が必要とされます。デジタル戦略を担う責任者には理系と文系のどちらか一方ではなく、両方の知識や視点をもった「理系と文系のハイブリッド人材」が求められるようになります。

理系と文系のハイブリッド、と聞くとなんだか大層なことのように聞こえますが、例えばWebマーケティングやデジタルマーケティングに関わっている方は、仕事をしていくうちにWebのプログラミングやWebサイトを構成するシステム面への興味に自然とたどり着いたり、また収集したデータの分析をする際に、ツールに頼るのではなくもう少し自分で他の分析ができないのかと疑問に思うこともあると思います。Webマーケティングをやっている方であれば、Twitterのつぶやきやテキストを分析できないか、顧客をグルーピングしてグループごとに違うメッセージや広告を出せないかなどを一度は考えたことがあるのではないでしょうか。実務レベルでは理系と文系の融合はごく自然なことであり、今後は文系や理系という括りをやめて、デジタル全般を活用して会社の成長に必要な施策を行っていくというイメージです。

冒頭でお話したIT業界で希少性の高い人材やデジタルトランスフォーメーションを成し得る人材というのが、まさにこの理系と文系のハイブリッド人材なのです。技術者は興味のある技術を使って開発したいものを開発してしまう傾向が往々にしてあり、そのためWebエンジニアというだけでは会社の戦略や課題解決につながる視点がなく、それではデジタルトランスフォーメーションは成しえません。会社が成長するためには何が必要か、そしてそれを実現するためにはどのようなデジタル技術を使うべきかという視点をもつ必要があります。

デジタルトランスフォーメーションに必要な2つの技術

デジタルトランスフォーメーションとは結局のところ、会社の強みにデジタルをかけ合わせて会社の競争力を高める、会社の生産性や顧客満足度を高める、従業員満足度を高めるという試みのことなので、それらに資する施策を一分野ではなく会社全体で考えることが必要になります。

デジタルトランスフォーメーションに必要な要素は2つあり、1つは社内の業務効率化やより少ない人手での業務遂行を可能にするシステム開発、もう1つはデジタル技術やWebマーケティングを使って売上を伸ばすというデジタルマーケティングです。そして、そのどちらにもAIは関わってきます。売り上げを伸ばすような、リコメンドエンジンを作るようなAIもありますし、例えば在庫の予測や需要予測をして在庫量を減らしてコストカットにAIを使うこともできたりするので、両方の側面があります。

繰り返しになりますが、これまではシステム開発をしていた人と、Webマーケティングをしていた人とAI技術の開発をしていた人とがバラバラであったため、これら3方向でデジタルトランスフォーメーションを考えられる人が非常に少ない状況でした。そのため、これら3方向を横断的に考えられる人材こそが、IT業界で希少性を発揮する人材やデジタルトランスフォーメーションを担う人材となるのです。理系的な知識だけではなく、会社の経営についての知識を併せ持ち、会社の業績を伸ばすには何が必要なのかという課題を発見する能力が必要になります。そのためには文系の知識が必要になるのです。

まとめ:

デジタルトランスフォーメーションが進むこれからの世界では、デジタルに関する領域を横断的に理解し戦略が立案できる人材が求められるようになります。デジタル技術への理解、戦略の知識、交渉術、全体を見る視点などは一朝一夕には身につきません。それゆえ、40代や50代のビジネスパーソンが積み上げてきたこれまでの経験が活かせるのです。そうなれば、長期的なデジタル人材としての活躍が見込めるようになります。これらの考えを踏まえてデジタル人材に求められる具体的なスキルについては、別の記事で改めてお伝えします。

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ABOUTこの記事をかいた人

ビジネスパーソンのリスキングを支援するパラレルキャリア研究会を主宰。 【経歴】 京セラ→アマゾンジャパン→ファーウェイジャパン→外資系スタートアップ→独立(起業)。早大商卒、欧州ESADEビジネススクール経営学修士(MBA)。「デジタル戦略コンサルティング(社外のデジタル戦略参謀)」、「講師業」、「Webアプリ開発」、「データサイエンス」を生業にするパラレルワーカー。