別記事「Pythonに自分好みの日本酒を見つけてもらうための7つのステップ」では、ウェブスクレイピングや自然言語処理の力を活用して、自分好みの日本酒を見つけるためのPythonプログラムについて紹介しました。
そんな日本酒が好きな著者ですが、先日、日本酒に関する認定資格のひとつのSAKE DIPLOMA(サケ ディプロマー)試験にパスいたしました。
普段はデータサイエンスに関する記事を書いておりますが、今回の記事では、
- 日本酒の資格試験があるなんて知らなかった。少し話しを聞いてみたい
- 唎酒師は聞いたことがあるけど、SAKE DIPLOMAは聞いたことがない。何が違うの?
という方に向けて、SAKE DIPLOMAについて紹介をしていきたいと思います。
なお、どのような試験対策を行いSAKE DIPLOMA試験に臨んだか?という内容は別記事「SAKE DIPLOMAをなぜ受けたのか?独学でどうやって対策をしたのか?」で紹介しております。
なので、試験対策の内容に興味がある方はリンク先の記事をご参照ください。
日本酒好きなら知っている?SAKE DIPLOMAとは?
SAKE DIPLOMAとは
SAKE DIPLOMAの資格の趣旨は、日本ソムリエ協会によると、
当協会は1969年発足以来、わが国におけるソムリエをはじめ酒類・飲料に携わる方々の資質の向上と、酒類・飲料の普及に努めてまいりました。そのような中、我々の伝統的な食文化である和食と日本酒・焼酎を取り巻く環境は大きな変化を迎えています。
このような現状を踏まえ、2017年に当協会は、皆さまが日本酒・焼酎に関する知識を深め、技量を向上させることが、日本の食文化のより一層の普及と向上に繋がるものと考え、日本酒・焼酎に特化した認定制度である「J.S.A. SAKE DIPLOMA」を発足致しました。(公式HPより)
とあります。
つまり、ワインを軸とし飲料の知識・サービス技術の向上に長年寄与してきた日本ソムリエ協会が、海外での日本食ブームの流れも踏まえ、日本の食文化を世界に普及させるため、日本食と供に提供される機会の多い日本酒や焼酎の知識・サービス技術の向上のために開発・提供した資格試験であると言えます。
また、日本酒のみを扱った資格だと思われがちですが、SAKE DIPLOMAは日本酒だけでなく焼酎も試験内容に含まれている資格試験となります。
SAKE DIPLOMA 試験概要
試験概要:
- 資格概要:2017年に制定された日本酒提供・販売者資格
- 認定:一般社団方針日本ソムリエ協会
- 合格者数:4千人ほど(2020年時点)
- 試験構成:日本酒・焼酎の知識を問う選択肢式試験と論述およびテイスティング試験
- 受験費用:25,220円(正会員×1次試験2回受験コースの場合)、ほか
- 資格認定登録料:20,950円
- 試験頻度:年1回(1次試験:7月~8月、2次試験:10月)
- 受験資格:1次試験基準日に満20歳以上であること
- 認定者:認定書、認定カード、認定バッジが協会から貸与
1次試験:
- 受験期間:2021年7月20日~8月31日 (2021年の場合)
- 試験方式:CBT試験(選択式)
- 試験時間:60分
- 出題範囲:申し込み後、協会より送付される教本から出題
- 他:申し込み時に1回受験または2回受験を選択可能
2次試験:
- 受験期間:2021年10月18日 (2021年の場合)
- 試験方式:論述+テイスティング筆記試験
- 試験時間:論述20分+テイスティング30分
- 他:1次試験通過者は翌年から5年間のうち3回までは1次試験免除の制度あり
SAKE DIPLOMA 試験問題
それでは、同試験でどのような問題が出題されるのかの一例を見ていきます。
1次試験:
北海道ではじめて開発された酒造好適米の品種名は何か?
1. 初雫 2. 吟風 3. 彗星 4. きたしづく
1912年に伏見の「月桂冠」の新種より分離された酵母はどれか?
1.きょうかい1号 2.きょうかい2号 3.きょうかい5号 4.きょうかい6号
全国で唯一「みやぎ・純米酒の県」宣言をしている宮城県の特定名称酒比率は何%か?
1.約90% 2.約94% 3.約96% 4.約98%
芋焼酎で用いられる代表的な甘藷であり、甘みとコクのある香味になりやすい甘藷の品種は?
1.アヤムラサキ 2.ジョイホワイト 3.ムラサキマサリ 4.コガネセンキン
比較的簡単な例題を挙げてみましたが、みなさんはどのくらい分かったでしょか?
(※正解は2次試験の問題の紹介の後に記載しておきます)
2次試験:
・論述問題:(2021年の例)
本格泡盛に合う料理について理由とともに200文字以内で述べよ
貴醸酒についてその将来性も踏まえて200文字以内で述べよ
テイスティング筆記試験:
- テイスティング飲料数:計6種(2020, 21年の例)
日本酒:4種
焼酎:2種
- テイスティング項目:括弧は選択肢の数(2021年の例)
外観:清澄度(3)、濃淡(5)、色調(8)
香り:第一印象(7)、特徴(52)
味わい:第一印象(4)、甘味(5)、酸味(8)、苦味(5)、バランス(10)、余韻(4)
特定名称:吟醸酒、大吟醸酒、純米酒、純米吟醸酒、ほか計8種
- 飲料に関する設問:8問(2021年の例)
生酛を使用した飲料はどれか?
セルレニン酵母を使用した飲料はどれか?
五百万石を使用した飲料はどれか?
アルコール添加された飲料はどれか?
各焼酎の種類は、芋、麦、米、黒糖、蕎麦、泡盛のどれか?
各焼酎の製法は、減圧蒸留か常圧か蒸留?
1次試験とは異なり、知識だけでは解けない問題となっており、テイスティング試験はある程度のトレーニングを積まないと解けない内容となっております。
※ 1次試験の例題の正解は1、2、3、4
SAKE DIPLOMA試験の合格率
SAKE DIPLOMA試験の受験者数&合格者数の推移は、公式ページで公開されております。
年度 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
2017年 | 3,515人 | 1,458人 | 41.5% |
2018年 | 2,570人 | 978人 | 38.1% |
2019年 | 2,457人 | 867人 | 35.3% |
2020年 | 2,228人 | 984人 | 44.2% |
まだ4年分のデータしかありませんが、合格率は35%~45%の間となっています。
先日私が受けた統計検定2級(2021年6月)の合格率が34.1%であったことを踏まえると、同程度の合格率と言えると言えます。
少なくとも、受験料を支払い、教材をパラパラ読んだだけでは、いくら日本酒好きの人であっても、絶対合格することは不可能な難易度の試験と言えます。
2次試験ではテイスティング試験もあるため、お酒が好きな方には楽しそうな試験にも映るかもしれませんが、SAKE DIPLOMA試験の合格を目指すのであれば、しっかり机に向かって学習することが求められるため、その点は認識が必要となります。
日本酒を扱う他の資格
日本酒を扱う資格試験はSAKE DIPLOMAだけではありません。
最後に、日本酒を扱う資格試験をいくつか紹介していきます。
- SAKE DIPLOMA INTERNATIONAL
- 唎酒師(ききさけし)
- 日本酒検定
- 日本酒ナビゲーター
- 酒匠(さかしょう)
- 酒造技能士
はじめにSAKE DIPLOMA試験を実施する日本ソムリエ協会が実施するSAKE DIPLOMA INTERNATIONALを紹介します。
SAKE DIPLOMA INTERNATIONALとは
- 資格概要:2018年に制定された日本酒提供・販売者資格
- 認定:一般社団方針日本ソムリエ協会
- 合格者数:368名(2020年時点)
- 合格率:25.4%, 21.8%, 39.9%
- 試験構成:筆記(60分) + 英文論述(20分)+テイスティング(40分)
- 受験費用:17,530円(会員)/25,901円(非会員)
- 試験頻度:年1回(10月)
- 開催場所:日本(東京・大阪)、中国、台湾、北米、ドイツ
- 資格認定登録料:20,950円
- 認定者:認定書、認定カード、認定バッジが協会から貸与
SAKE DIPLOMA受験者用の公式教材は日本語となりますが、SAKE DIPLOMA INTERNATIONAL受験者用の公式教材は当然英語となります。
また試験内容は、SAKE DIPLOMAと異なり、1次試験のCBT試験がなく、会場試験のみとなっているようです。1次試験の足切りこそありませんが、会場試験で筆記(60分)があるため、最終的に学習すべき内容は、通常のSAKE DIPLOMAと同等と言えそうです。
合格者の数の少なさを踏まえると、受験層は、海外エクゼクティブをもてなす一流ホテルや飲食業の従事者の方々でしょうか。
日本酒を英語で語れる希少性の高い人々と言えそうです。
次に、日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)が実施する認定資格を4つ紹介します。
唎酒師(ききさけし)とは
- 概要:1991年に制定された日本酒提供・販売者向けの資格
- 趣旨:お客様に日本酒を美味しく飲んでいただくための資格
- 認定者:日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)
- 認定者数:累計4万人以上(2021年11月時点)
- 合格率:不明
- 試験構成:日本酒の知識や提供などに関わる論述を行う選択式・記述式試験とテイスティングを伴う筆記試験の4次試験で構成
- 受験費用:118,700万円~138,300万円(コースによる)
- 認定者特典:認定書、バッジ型認定章、認定シールなどが付与される
日本酒検定とは
- 概要:2010年に制定された日本酒の消費者向けの知識指標のための資格
- 趣旨:日本酒の魅力を消費者のみなさまに知っていただく機会を広く提供し、消費者が「日本酒をもっと楽しんでいただくこと」を目的
- 実施者:日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)
- 合格者数:累計4千人以上(2021年11月時点)
- 合格率:不明
- 試験:5級・4級(ネット検定)、3級(CBT試験)、2級・準1級・1級(会場試験/年1回開催)
- テイスティング試験はなし
- 受験費用:1.87万円~13.83万円(コースによる)
- 認定者特典:認定書、認定ピンズ、認定シールなどが付与される
日本酒ナビゲーターとは
- 概要:日本酒消費者向けの認定資格
- 趣旨:日本酒の魅力を消費者の皆さまに知っていただくことを目的
- 認定者:日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)
- 認定者数:不明
- 合格率:認定セミナー受講で認定
- 試験:なし
- 受験費用:10,900円(税込)ほか(開催コースによる)
- 認定者特典:認定書の付与、唎酒師など受験料を優待価格で申し込み可能な権利
酒匠(さかしょう)とは
- 概要:卓越したテイスティング能力を武器に、日本酒や焼酎のセールスプロモーションを行う資格
- 趣旨:唎酒師や焼酎唎酒師を超えるテイスティング能力を磨くことを目的に、味の要素の理解や、香りの表現例の習得などを行う
- 認定者:日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)
- 合格者数:不明
- 合格率:不明
- 試験:1次~4次(筆記およびテイスティングを伴う筆記など)
- 受験費用:114,000円(受験費用)+25,000円(認定登録料)
- 認定者特典:認定証書および認定書の付与
- 受験資格:唎酒師、焼酎唎酒師である、など条件あり
最後に、日本酒の唯一の国家資格となる資格にについて紹介します。
酒造技能士とは
- 試験概要:国家資格(厚生労働省)である技能検定制度の130職種のひとつ
- 実施者:都道府県知事
- 合格者数:不明
- 合格率:不明
- 試験:1級と2級、清酒製造に必要な技能
- 受験費用:18,200円(実技試験受験手数料)
- 認定者特典:技能士章の交付、職業訓練指導員試験の一部受験免除など
日本酒に関する資格は、じつはまだ他にも存在しますが、長くなってしまったので、今回は以上とします。
まとめ
今回の記事は、SAKE DIPLOMAの概要として、
- SAKE DIPLOMAの試験概要
- SAKE DIPLOMAで出題される試験問題
- 日本酒を扱う認定資格
を紹介していきました。
私がSAKE DIPLOMA試験にチャレンジした理由や、どうやって試験対策を行ったかについては、また別の記事で紹介したいと思います。
じゃあ