時間管理の「第二領域」を意識して未来の自分に投資する

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終身雇用の終焉、経済の衰退、年金制度の無効化など、将来の見通しが立てにくい現在の日本。この状況において、30代から50代のビジネスパーソンにとって、本業をもちながら新たなキャリアを築く「パラレルキャリア開発」は必須です。しかし、ビジネスパーソンの能力開発を阻む3つの壁でも述べているように、パラレルキャリア開発のための「勉強時間を確保できない」というのは、多くのビジネスパーソンに共通する課題でもあります。

それでは、多忙なビジネスパーソンが自己投資の時間を確保するためにはどのようなアプローチが有効なのでしょうか。今回は、社会人の勉強時間確保にも役立つ「時間管理」の考え方について説明します。

時間管理を考える上で重要な4つの領域

マンダラートを活用してキャリアをデザインしようの中でも触れていますが、経営コンサルタントで作家のスティーブン・R・コヴィー氏は、著書「7つの習慣」の中で、広義の「仕事(お金を稼ぐための仕事に限らない)」を、その緊急度と重要度により4つの領域に分類できると述べています。私はこの考え方を重要視しています。

 

時間管理の「第二領域」を意識して未来の自分に投資するの図です

緊急度は、「今すぐの対処を求められていること」で、重要度は「大切にしなければならないこと、あるいは大切にしたいこと」です。この2つの観点をベースにあらゆる「仕事」は「Ⅰ.緊急かつ重要」「Ⅱ.緊急でないが重要」「Ⅲ.緊急だが重要ではない」「Ⅳ.緊急でも重要でもない」という4つの領域に分かれます。

第一領域の「緊急かつ重要」な仕事とは、「即時の対応が必要で、大切な結果と結びついているもの」です。具体的には締め切りのある仕事や客先からのクレーム処理、切羽詰まった問題、病気や事故などが挙げられます。第二領域の「緊急ではないが重要」な仕事とは、人間関係づくり、ミッション・ステートメントを書くこと、長期的な計画、健康維持のための運動などです。第三領域の「緊急だが重要ではない」仕事は、重要でない電話、無駄な会議や報告書、無意味な接待や付き合い、雑事などが挙げられます。第四領域の「緊急でも重要でもない」ものは、暇つぶし、単なる遊び、待ち時間、目的のないテレビ視聴時間などが挙げられます。

スティーブン・R・コヴィー氏は、このうち「第二領域に集中することは、効果的な自己管理の目的である。第二領域は緊急ではないが、重要な事柄を取り上げているからである」と述べています。しかし一方で、「それらは緊急ではないから、いつまで経ってもなかなか手がつけられない」とも指摘しています。

まず手始めにご自身の1週間を振り返り、着手したタスクを全て書き出してマトリックスに当てはめてみましょう。

人生における「第二領域」の重要性

スティーブン・R・コヴィー氏が述べているように、第二領域こそが自分にとって中長期的に重要な部分です。社会人のパラレルキャリア開発、能力開発もまさにこの第二領域に関わる話です。第二領域の実現・実践に時間を確保することが大切であり、そのほうが人間にとって幸せや喜びを感じやすいのです。

第二領域に挙がる項目は個人によって大きく異なります。例えば、私にとっては「家族と一緒に過ごす」事も第二領域に含まれます。家族と過ごすというのは特に緊急ではありませんが、自分の命が限りあるものだとすれば重要なことです。その考え方に則していえば「友達と時間を過ごす」なども第二領域に入ります。

結局のところ、お金を多く稼いでいても自分の時間がない人は疲弊してるようにしか見えません。ある程度の収入を得られるようになれば時間の方が大事ですし、年を取り残された時間が減ってしまえば、なおさら時間の価値が高まります。20代の方であれば第一領域だけに注力してもいいかもしれませんが、自分の人生の残り時間が少なくなればなるほど第二領域が大事になってくるのです。

他の領域を見直して「第二領域」の時間を作り出す

それでは、第二領域の時間を創出するために、他のどの領域を見直せばいいのでしょうか。第一領域は「緊急かつ重要」ですから、嫌が応でも着手しなければなりません。一方、第三領域は「重要度ではない」ためできるだけなくした方がいいのですが、会社員でいる限りは相手があることなので難しいでしょう。第三領域の仕事をなくすよう提案はできるかもしれませんが、結局は上司次第だったり、これまでの流れや慣習に従っている場合が多いためです。リモートワークが導入された会社ではこの領域の仕事が大きく減っているのではないかと推察しますが、枠組み自体を変化させるのは個人レベルではどうにもならないことの方が多いと思います。

以上のことを踏まえると、第二領域の時間を創出するためには、まず第四領域にメスを入れるのが正攻法といえます。今ある仕事やタスクを棚卸しして、第四領域に入るものがあれば、まずそれをなくすようにします。完全になくすのが難しいようであれば、頻度を下げられないかを考えましょう。もし、お金に余裕があれば外注するなど、他の誰かにお願いするという選択肢も考えられます。外注する場合は支払うお金との兼ね合いもあるので難しいところではありますが、掃除や洗濯なども本来は外注できるのが理想です。やめられるものは徹底してやめてしまいましょう。

第四領域にある事柄を解決してもなお、第二領域に振り分ける時間確保が難しいようであれば、第一領域を根本的に見直すべきです。第一領域の仕事は本当にあなたにとって重要であるかを考えましょう。もし、あなたの相手(会社や上司など)にとって重要であることが多い場合は、たとえ収入が減ったとしても自分の時間を確保できる仕事にチェンジするなどの選択肢も考える必要があります。

各領域の理想的な割合

第一領域の仕事はどれも差し迫った問題や期限が設定されているため、完遂した場合に達成感はあるかもしれませんが、満足感はあまり感じられません。「7つの習慣」では、第一領域が生活の9割を占めてしまうと、残りの1割は第四領域の気分転換やリラックスに費やされてしまうと述べられています。平日は仕事でクタクタになり、土日は息抜きや休息で終わってしまうという状況は想像に難くないのではないでしょうか。このような悪循環を防ぐためにも、第一領域に割く時間は全体の6~7割程度、1週間のうち4日程度が理想です。

第二領域には全体の2割から3割の時間を確保しましょう。第一領域が8割、第二領域が2割でも構いません。とにかく第二領域に充てる時間を確保します。そのために、できるだけ自由になる時間を作るようにしてください。前述のように、マトリックスにおける緊急度というのは大抵の場合、自分の緊急度ではなく他者の緊急度合いです。会社員でいる場合はコントロールが難しいかもしれませんが、「忙しくならないように頑張る」という気持ちで第二領域のための時間を作ってみてください。

まとめ:

スティーブン・R・コヴィー氏が述べているように、第二領域に時間を確保することが人生にとって非常に大切であり、「第二領域こそが人間の生きる楽しさ」だと言えます。そのため、あまりに第一領域に費やす時間が多い場合には仕事を変えるという選択肢も必要です。会社員でいることは、お金の面で見れば安定した収入を得られる可能性が高いですが、時間管理という面では第一領域にかける時間がどうしても多くなってしまうため、あまり得策ではありません。

今の時代は、会社員を脱却するという選択肢も十二分にありえます。今後は人口も減少傾向にあるため、特に若い30代の能力の高い方々が職にあぶれてしまう事態はまずないでしょう。こういった背景もあり、自分らしい「働き方」や「生き方」の選択肢を広げるための「パラレルキャリア開発」が重要なのです。「働き方」が変われば、「生き方」も変わるのです。

私達は会社や個人では、本当の意味での「働き方改革」「生き方改革」の実現は難しいという課題感から20代・30代の若手ビジネスパーソンのパラレルキャリアを実現するために、パラレルキャリア研究会というコミュニティーを立ち上げました。一緒に学びたい方がいらっしゃれば、ぜひこちらからお問い合わせください。

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ABOUTこの記事をかいた人

ビジネスパーソンのリスキングを支援するパラレルキャリア研究会を主宰。 【経歴】 京セラ→アマゾンジャパン→ファーウェイジャパン→外資系スタートアップ→独立(起業)。早大商卒、欧州ESADEビジネススクール経営学修士(MBA)。「デジタル戦略コンサルティング(社外のデジタル戦略参謀)」、「講師業」、「Webアプリ開発」、「データサイエンス」を生業にするパラレルワーカー。