日本人が英語を話せない2つの要因

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第4次産業革命で活躍する次世代ビジネスパーソンにとって、ビジネス英語が必要なスキルだという点については、次世代ビジネスパーソンに必須となる8つのポータブルスキルでご紹介しました。しかし、現在のところ日本人の英語力は世界的に見ても低く、その原因が大学の英語の入試問題にあるということも、日本の英語教育が世界で通用しないワケでご説明しています。

これらを踏まえて、今回は日本人が英語を話せない2つの要因について考察します。

日本人が英語を話せない要因1:実用性ではなく教養としての英語を学習している

日本人が英語ができない(使えない)前提として、受験勉強のゴールに設定している東大の入学試験が英語力を問うものではないということは日本の英語教育が世界で通用しないワケでお話しました。では、我々があれだけの長い時間をかけて勉強している英語とは一体何なのでしょうか。結論から言いますと、我々が学校で勉強しているのは、実用性に乏しい、教養としての英語です。文法的には正しくても、日常生活や実際のビジネスシーンでは使われてない古典の英語と思って差し支えありません。

教養として英語を勉強すること自体は悪いことではないのですが、日本におけるリーディング中心の英語教育を見ると、やや偏りすぎではないかと感じます。私は高校時代に学校の教科書をイギリス人に見せたことがありますが、「こんな表現は誰も使ってないよ」と一蹴され、大変ショックを受けました。

日本人が英語を話せない要因2:発音の勉強が不足している

英語力は「語彙力」と「発音」と「文法」の3つで構成されているとよく言われます。日本でも「語彙力」に関しては英単語帳などでインプットし、「文法」は教科書で学びますが、問題は「発音」です。皆さんもそうだと思いますが、学校で発音を注意される機会はそうそうありません。私も発音を直された記憶がありません。英会話学校では発音を矯正される機会もあるでしょうが、学校ではまずそのチャンスはありません。なぜかというと、発音は試験に出ないから、大学入試で問われないからです。それどころか、カタカナ英語の方がクラスメイトには分かりやすいので、カタカナ英語のほうがむしろ良しとされているという風潮があります。我々日本人には、発音の練習が圧倒的に足りていないのです。

発音のゴールは、英語しか分からないネイティブでも聞き取れるような英語を話すことです。しかし、学校や受験の英語指導などは語彙力や文法が中心のため、例えば「preventがあったら後ろにはfromが来る」ということは教えるのですが「He plays the guitar.」の発音については誰も指摘しません。「三単現のs」や単語のスペルミスには猛烈なダメ出しを受けますが、発音は誰にも直されないままなので、中学校1年生レベルで成長が止まっています。そして、何よりこれが重要なのですが、発音できない単語は聞き取ることができません。日本人がリスニングもできないのは、発音の練習をしないからです。自分で発音できない音を聞き取ることはとても難しいことなのです。学校の先生が発音を教えられないというのも一因ですが、発音できないから聞き取れない。聞き取れないから会話ができない、会話をしないからますます発音の練習ができないという悪循環が出来上がっているのです。

発音の勉強とは?

具体的な発音の勉強法は、下記のように考えられます。

 発音 = 「単語の発音」× 「音の変化(音法)」 ×「イントネーション(意味理解)」

まずはちゃんと単語の発音記号を読み、発音できるようになるところがスタートです。我々の発音は中1レベルで止まっていますから、まずはそこに立ち返る必要があります。次に音の変化についての理論的な勉強が必要です。英語は単語と単語が組み合わさると、発音が変わります。日本では一切教えられていませんが、文の法則が「文法」であるように、音の法則である「音法」というものが存在します。これを知らないがために日本人は、それぞれの単語は発音できたとしても、単語が連なると発音が分からなくなってしまうのです。そして、さらに「イントネーション」が加わります。英語を話す際には全部が同じ音量というわけではなく、この単語は重要、この単語は別にいらない、あまり強く発音しなくていいという判断が必要です。そして、その判断は文章の意味により変化します。意味を考えながら喋らないと、イントネーションはつけられません。イントネーションも発音に関わる大切な部分です。

英語しか分からないネイティブにカタカナ英語はどう聞こえる?

日本人の英語にほぼ触れたことのない英語ネイティブに、カタカナ英語は2割程度しか通じないと言われています。それまでにカタカナ英語に触れたことがあるかどうかで結果は異なるのですが、特に単語ごとにブツ切れになっている、英語らしいリズムがないという印象があるようです。日本語は基本的に全部が同じ音量で、単語を省略して話すことはほとんどありませんが、英語は重要ではない単語や前置詞は音がなくなったりするので、そういった英語らしいリズムがない発音を聞き取りにくいと感じるようです。

これを日本語で例えると、「バット」が「バツト」となるように、小さい「つ」が大きい「つ」になってるようなものです。「納豆」を「ナツト」、「一緒」を「いつしよ」と言われた場合には、日本人でもなかなかすぐには分からないと思います。それと同じく、日本人にしてみれば大した違いには思えない音も、外国人からすると全然違う音に聞こえているということです。

余談になりますが、「GoToトラベル」など日本人だけにしか通じないような創作英語、和製英語が多すぎるとも感じます。

今後、英語力は4技能が主流に

子ども達はこのようにして英語を勉強し育つので、東大生の英語力をもってしてもTOEFLのスコアでは大学留学すらできないレベル止まりになっています
※下の表は、各テスト間の正確なスコア換算ではありませんが、目安として掲載しました

これには文部科学省もさすがにまずいと思ったのか、日本の英語力は今後、読む・聞く・話す・書くの4技能が主流になるようです。4技能をそれぞれ身につけないと、英語学習のグローバルスタンダードではないと判断したということでしょう。2020年度から予定されていた大学入学共通テストへの英語4技能検定試験の導入は現在見送られていますが、近々始まるようになるでしょう。大学の入試英語が変われば、日本の英語教育も変わっていくと私は思っています。

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ABOUTこの記事をかいた人

ビジネスパーソンのリスキングを支援するパラレルキャリア研究会を主宰。 【経歴】 京セラ→アマゾンジャパン→ファーウェイジャパン→外資系スタートアップ→独立(起業)。早大商卒、欧州ESADEビジネススクール経営学修士(MBA)。「デジタル戦略コンサルティング(社外のデジタル戦略参謀)」、「講師業」、「Webアプリ開発」、「データサイエンス」を生業にするパラレルワーカー。