日本の英語教育が世界で通用しないワケ

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第4次産業革命で活躍する次世代ビジネスパーソンにとって、ビジネス英語が必要なスキルだという点については、次世代ビジネスパーソンに必須となる8つのポータブルスキルでご紹介しました。

現在30代から50代のビジネスパーソンは、中学校の義務教育で3年間、高校時代も含めれば合計6年間英語を勉強しています。さらに小学生の時から英語を習っていた、大学でも英語の単位を履修したとなると、累計年数はそれ以上に及びます。しかし、このような環境で育っても「私はビジネスの場で問題なく英語でコミュニケーションがとれます」と胸を張って言える人は多くないでしょう。これだけの時間を英語学習に充てているのに、我々日本人はなぜこんなにも英語が話せないのでしょうか。

日本における英語教育の現状

一般的に、英語の習得には3000時間から5000時間の学習時間が必要と言われています。では、実際のところ日本人は学生時代にどれほど英語を勉強しているのでしょうか。

下図は、平均的な日本人の英語学習時間を大まかに割り出したものです。中学校と高校の英語の授業で約800時間、受験勉強も含めた授業以外の予習復習で800時間程度が加算されます。さらに、浪人経験があれば年間1200時間程度、大学でも英語の授業を履修した場合は年間500時間程度が加算されます。これを合計すると3300時間程度になり、数字上は目安時間を達成していることになります。しかし、問題はその中身です。現在、日本の英語教育のほとんどがリーディング中心となっています。私も浪人時代を含め長きにわたり英語を勉強しましたが、あれだけの時間のほとんどがリーディングに費やされていた、というのは世界でもまず見られない状況だといえます。

日本の英語教育が世界で通用しないワケの表です

日本における大学別のTOEICスコアをみると、日本の平均点が520点のところ、東大生の平均スコアは一番高いもので大学院生(文系)の800点、学部平均は688点となっています。この結果について、「意外に低い」と感じられた方も多いのではないでしょうか。点数で言えば私立大学の方が高いです。ちなみに、高校の英語教師の平均スコアは620点程度です。

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一方で、国別のTOEICの平均スコアを見ると、日本の平均スコアの520点は最下位グループに属していることが分かります。TOEICスピーキングテスト/ライティングテストでも、ほぼ最下位のレベルとなっています。前出の図を見た限りではTOEICにおける日本の大学生の平均点は高く思えますが、例えば韓国は国の平均点が678点と、東大と同程度のレベルです。

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それでは、TOEFLのスコアランキングはどうでしょうか。TOEFLは英語圏での留学実生活に必要な読む・書く・話す・聞くの4技能を総合的に測定する試験で、海外の大学や大学院に留学する際に必要となるため、全世界で実施されているものです。こちらの結果はさらに厳しい状況で、全170カ国中、日本は146位となっています。TOEFLの受験者は海外留学を目指す、英語が得意だと思っている(思っていた)日本人が母集団のはずなのですが、それでもこの結果です。さらにスピーキングに限って見ると、日本は170カ国中最下位となっています。私も実際にTOEFLを受験しましたが、腰を据えて頑張ってもなかなかスコアが伸びず、非常に苦労しました。

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TOEFLは4技能の各セクションが30点満点の、合計120点満点のテストです。世界の平均点が80点程度なのですが、日本は71点と平均点より大きく低い点数となっています。さらにはセクションごとの平均点にばらつきもなく、どれも同じくらい低い点数になっています。悲しいことに、あれだけ学生時代に頑張ってきたリーディングも高い点数ではありません。先進国の中でも日本は低く、アジアでもほぼ最下位です。同じアジア圏でもシンガポールとインドは高く、世界で見るとドイツ人の点数がとても高いです。

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諸悪の根源は大学入試の英語にあり

あれほど多くの時間をかけて勉強してきたのに、なぜ日本人の英語力は世界的に見て圧倒的に低いのでしょうか。私が思うに、日本人の英語力が低い原因は大学入試の英語にあります。実際に、2020年の東大の英語の入試問題を見てみましょう。

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英文を読んだ上で「この文章の内容を70〜80字の日本語で要約せよ」とありますが、はっきり申し上げてこれは英語では要らないスキルです。70字でうまく日本語で要約できるか、あるいは「空所に入れるのに最も適切な文章を選びましょう」といった問題は、文章力、読解力をみる問題です。つまり、これは英語力というよりは、国語力を問うている問題なのです。東大の入試であっても、英語ができる人が点数を取れる内容ではないのです。国語力もないと点数が取れない試験問題になっているのです。

さらには次の「下線部を英訳せよ」という問題をご覧下さい。この内容を英語で話す思う場面が現実にあるのか、というのは甚だ疑問です。そして、これをどう解くかといえば、“まゆつばもの”に該当する英単語は存在しないので、それに似た表現を探して文章を作成するということになります。しかし、これはもはや英語力ではなく国語力を問うているのです。

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英語の試験自体がこういった内容のため、東大に受かったからといって必ずしも英語ができる(使える)わけではないのです。私はこれは東大に限った話ではなく、難関国公立大学の入試英語でも問われているは英語力ではないと思っています。そういった影響が私立大学などにも及んでいると考えており、世界の中で英語力が低いのはそういう所以だと感じています。

現在、小学受験や中学受験をする子ども達の多くは、東大への入学を目指して勉強しています。そのため、東大の英語の入試問題があのような内容であれば、受験校や予備校はそれに応じた対応をせざるを得ません。こうして、英語力を高めるものとは異なる英語の勉強を積み重ねた結果、社会に出た際に日本人の英語力は世界最低グループになってしまうのです。

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ABOUTこの記事をかいた人

ビジネスパーソンのリスキングを支援するパラレルキャリア研究会を主宰。 【経歴】 京セラ→アマゾンジャパン→ファーウェイジャパン→外資系スタートアップ→独立(起業)。早大商卒、欧州ESADEビジネススクール経営学修士(MBA)。「デジタル戦略コンサルティング(社外のデジタル戦略参謀)」、「講師業」、「Webアプリ開発」、「データサイエンス」を生業にするパラレルワーカー。