ファイナンシャルリテラシーを高めたい社会人が「簿記」を学ぶべき理由

ファイナンシャルリテラシーを高めたい社会人が「簿記」を学ぶべき理由のアイキャッチです

次世代を担う30代から50代のビジネスパーソンにとって、「ファイナンシャルリテラシー」が大切になるという点については次世代ビジネスパーソンがファイナンシャルリテラシーを高めるべき理由にてお話しました。その内容を簡単にまとめると、ファイナンシャルリテラシーを高めるべき理由は「お金で損をしない」ためであり、納税が国民の義務であるにも関わらず、学校でお金に関する知識を教えてもらえない現状においては、自から率先してお金に関する知識を増やすことが重要となります。

このファイナンシャルリテラシーと切っても切り離せないのが「簿記」の知識です。今回は改めて、社会人が簿記を学ぶ意義についてお伝えします。

簿記はファイナンシャルリテラシーの基礎

財務三表は企業の「事業モデル」と「健全性」を読み取るための診断書」において、貸借対照表(バランスシート、B/S)、損益計算書(P/L)と、キャッシュフロー計算書を連動させることにより、個別企業のストーリーが見えてくるとこと、また財務諸表は同業他社の強みや弱みを知る格好の手段であることをお伝えしました。

そして、これら重要な指針となる財務諸表を読み解くのに必要となるのが「簿記」の知識です。この後で詳しくお話しますが、簿記は会社の日々の活動の記録であり、それをベースに財務諸表が作成されています。これは言い換えれば、簿記の知識がない状態では財務諸表の理解が難しくなるということです。簿記の知識がない状態で財務諸表を読むことも可能ではありますが、財務諸表の数字の発生源が分からないことから理解の深度に違いが生まれます。

同記事の中では財務三表のつながりを人間の身体に例えてご説明しましたが、今回は簿記と財務諸表のつながりを「パーソナルトレーニング」に置き換えてご説明します。

簿記はパーソナルトレーニングにおける日々の記録

財務諸表を減量目的の「パーソナルトレーニング」で例えた場合、以下のような置き換えができます。

B/S=筋力
P/L=体重
キャッシュフロー計算書=体調

筋力があればパフォーマンス、つまり減量目的であれば痩せやすさという結果につながります。もちろん筋力がなくても痩せる人はいますが、B/Sがいい状態にあることでいい結果を生み出しやすくなります。他方、筋力があり体重も適正、見た目が健康であっても体調が悪いということもあり得ます。「財務三表は企業の「事業モデル」と「健全性」を読み取るための診断書」においてはキャッシュフロー計算書を「血液」と表現しましたが、ここでは人体の内部の状態を見るというイメージで、キャッシュフロー計算書を体調と置き換えます。

この例えにおいて簿記は、毎日のトレーニングメニューや食事内容、運動の記録に当たります。

B/S=筋力
P/L=体重
キャッシュフロー計算書=体調
簿記=トレーニングメニュー、食事内容、運動の記録

簿記はダイエットにおける日々の記録です。人間は食事をしないと活動できないため、いくらダイエット目的であっても運動だけをしているわけにもいきません。しかし、食事自体は減量そのものにはプラスには働かたないため、両方をバランスよく行う必要があります。

ダイエット中に毎日のトレーニングメニューや食事内容、運動の記録などを記録しておけば、筋力を増強したいと思った際にはこれまでのトレーニングメニューを見直すことができ、また体重の増減があった場合にも食事内容のどこを改善するべきなのか、ピンポイントで対策を講じることができます。一方で日々の記録を全くつけていない、または完全に人任せにしている場合には、自身でその原因を見つけ出すことができません。毎日の食事の記録をつけるレコーディングダイエットというものがありますが、簿記にも同様の効果があり簿記がわかると会社の経費について意識が高まります。

これは会社においても同様です。例えば食事を費用、運動を売上とするならば、人間が物を食べないと活動ができないのと同様に、会社も費用を全くかけず売上だけを上げ続けることはできません。会社の設備や人件費など、必ず何かに投資をしなければ売上は上がらず、費用と売上のバランスが重要になります。ある会社において費用がかさんでいる、売上が上がらないといった場合に、簿記に立ち返ってその原因を見つけ出す事ができるのです。

簿記ができると節税や資産運用にも役立つ

簿記は会社における日々の活動記録であることから、簿記を学ぶことで財務諸表が読めるようになり、さらには税務会計が分かるようにもなります。資格取得は必須ではありませんが、簿記3級程度の知識は持っていたほうがいいでしょう。

会計の理解が深まると、最終的には株式投資や不動産投資などの資産運用の際の計算や、どの程度投資をしても大丈夫かという判断ができるようになります。簿記や財務会計、税務会計を知ることで、ご自身で事業をしている方であればいくらぐらいまで投資できるのか、本当に儲けにつながる投資なのかが理解できるようになります。会社員であっても他社を第三者的に評価する場合や、個人的な投資判断の際にも有用です。これらについては別の記事で詳しくお伝えします。

まとめ:

簿記は企業における日々のお金のやり取りの記録です。簿記が分かることで財務諸表への理解が深まり、それをベースに節税や資産運用への知識への広がりが生まれます。これらのことから、簿記の知識はファイナンシャルリテラシーの第一歩といえるでしょう。

[article-banner-2]

ABOUTこの記事をかいた人

ビジネスパーソンのリスキングを支援するパラレルキャリア研究会を主宰。 【経歴】 京セラ→アマゾンジャパン→ファーウェイジャパン→外資系スタートアップ→独立(起業)。早大商卒、欧州ESADEビジネススクール経営学修士(MBA)。「デジタル戦略コンサルティング(社外のデジタル戦略参謀)」、「講師業」、「Webアプリ開発」、「データサイエンス」を生業にするパラレルワーカー。